自治体労使、大規模ストを経て賃金交渉妥結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

1979年以来の大規模なストライキで注目を集めていた地方自治体労使の賃金交渉は8月5日、2年間に7.7~10.9%の賃上げを実施することで妥結した。これにより8月14日に予定されていた2回目の24時間ストライキはひとまず回避されることになった。

賃金交渉での労使の主張

公務員労組ユニソン、運輸一般労組(TGWU)、全国都市一般労組(GMB)の3労組が、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの410カ所の地方自治体職員130万人を代表して、賃金交渉にあたった。労組は当初より6%の賃上げと最低年収の1万1000ポンド(年収)への引き上げを要求してきた。自治体職員全体の3分の2が年収1万3500ポンド以下であり、また最低所得者層の賃金は4.8ポンド(時給)で、法定最低賃金の4.2ポンドとほとんど変わらない。

これに対して自治体側は、最大限の譲歩として31%を提示。組合側の6%を受け入れれば、賃金コストの増大で公共サービスは競争優位を失い、事業の民間委託がますます進むことになると労組側を牽制していた。

現労働党政権下で最大のストライキ

結局、労使の折り合いがつかず、労組側は予告通り7月17日に24時間ストライキを決行した。ストには清掃人、ゴミ収集員、教員、役所職員など75万人が参加し、1979年以来の大規模なストライキとなった。労働党が1997年に政権に就いて以来最大のストライキでもあり、ホワイトカラーとブルーカラーが共にストに参加したのも自治体職員のストとしては初めてである。

スト後の交渉も難航していたが、8月5日夜、助言斡旋仲裁局(ACAS)の提示した妥協案を労使ともに受け入れたことにより、8月14日に予定されていた2回目の24時間ストライキはひとまず回避される運びとなった。

妥協案の内容

ACASの提示した妥協案は、2年の複数年協約で、具体的な賃上げ幅は次の通りである。

2002年4月~9月30日については、スケール・ポイント4(最低所得層)の職員は時給5ポンド(4.1%の引き上げ)が保障され、それ以外の職員については3%引き上げられる。

2002年10月からは、スケール・ポイント4と5の職員は2%、スケール・ポイント6以上の職員は1%、それぞれ引き上げられる。

2003年4月1日からは、すべての職員について3.5%引き上げられ、スケール・ポイント4と5の職員については、追加でさらに1%引き上げられる(時給では5.32ポンドが保障される)。

全体として7.7%~10.9%の引き上げとなり、これについて労組側は、公正な内容であり、低賃金と賃金格差の撲滅へ向けた大きな一歩となるとコメントしている。労組の勧告に応じて組合員がこのACAS案を受け入れれば、争議は最終的に解決する

自治体賃金委員会の新設

ACASの提案にはまた、低賃金と賃金格差の問題を調査する「自治体賃金委員会」の設置が盛り込まれた。委員長には労使以外の第三者が就く予定で、2003年に最初の報告書を提出する。

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