TUCP、民間労働者社会保障制度の改革を提言

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年9月

フィリピン労働組合会議(TUCP)は、民間労働者社会保障制度(SSS)の制度改革に関する見解を発表した。

年金給付とサラリーローンの内容

TUCPは、現行の給付内容を継続すべきであると強調した上で、年金制度については、次のような改革案を提言した。

  1. 年金額の増加率を、民間労働者の賃金上昇率に連動させる。但し、インフレ率を下回らないようにする。
  2. 最低年金額は、年金受給資格を得る10年間の最低加入期間を得たものは、月1200ペソにし、その後10年ごとに1200ペソを加算する。
  3. 年金額の算定については、より透明な保険数理計算に基づいた算出方法を基礎とするよう改善する。
    また、SSS加入者に対するサラリーローンについては、当該加入者の月額賃金の3カ月分相当額まで貸付 可能にすべきであると主張し、サラリーローン制度改革に関するこれまでの議論は、加入者の意見を反映させたものではないと批判した。

財政運営について

TUCPは、SSSの「保険数理計算が正当と認める限り、SSSサービス内容の拡充及び支給金額の増加を認める方向で、4年に1度制度の見直しを認める規定」を根拠に、可能な限り給付内容を拡大する制度改革を要求した。また、SSS財源の逼迫の原因は、年金給付対象者の増加にあるとする政府の見解を否定し、むしろ前政権の株式への投資の失敗によるものと主張した。また、株式投資の失敗に関する早急な情報公開をSSS側に求めた。

TUCPは、基金の運用については、(1)外為や海外投資よりも、国内企業の生産性を高めるような投資に重点を移すべきである、(2)株式への投資に偏っている運用方針が、SSS基金の財政的基盤を不安定にしていると主張した。

保険料率の改定

TUCPは、SSS保険料の引き上げを、現状の8.4%から大幅に引き上げることに対し、生活の苦しい労働者の負担を増加させるとして、反対を表明した。代替策として、SSS法20条の趣旨に照らし、国庫支出金という形で、赤字を補填すべきであると主張した。また、一律に保険料率を引き上げるのではなく、高所得者層を対象とした、「高負担高保障の制度」を自発的選択できるよう、柔軟な新制度の導入も検討すべきであると主張した。

望まれる失業保険及び福利厚生の整備

TUCPは、「最低限の社会保障制度に関するILO条約」に規定された、失業保険と福利厚生制度の導入をSSSと政府に求めた。

  1. 失業保険制度については、非自発的失業者に対し、平均賃金の45%に相当する保険金の給付を保障する。
  2. 子供の養育費、生活費の補助となるような福利厚生制度の導入を立法化すべきである(ILO条約によれば、最低平均成人労働者賃金の3%に子供の数をかけた金額は確保されるべきであると明文化されている)。

強制加入者の拡充及び運用委員会担当者の追加

TUCPは、インフォーマル部門(家事労働者、自営業者等)に属する労働者についても、SSS加入を認めるべきことと主張した。また、SSS運用委員会の委員数を二名追加することに関しては、賛成を表明し、1人はインフォーマル部門から選出されるべきであると提言した。

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