労働者憲章18条、CISLとUILは承認の方向へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年9月

1.解雇制限の緩和

従業員数が15人を超える企業は、労働者憲章18条の制限が緩和され、正当な理由のない解雇がなされた場合でも、労働者を復職させる義務は課されず、金銭手当を支給すれば足りることになりそうである。約10カ月間に及ぶ交渉を経て、政府によって労使に提示された労働市場改革案の最も重要なポイントはここにある。

イタリア工業連盟(Confindustria)や他の使用者団体が、この最終案の受け入れに合意したのに対し、CISL(イタリア労働者組合同盟)とUIL(イタリア労働連合)は、内部での協議を経た後に、政府案全体について意見を付すという留保を付けている。閣議の副議長であるGianfranco Finiは、「政府案は、労働者のいかなる権利も損なうものではなく、むしろその保護を促進するものである」と述べ、合意署名のための「最終会合」が7月2日に開かれることを明らかにしている。しかし、この日までに、CISLとUILの内部調整が終了するかは依然として不透明である。政府案の社会的緩衝措置に関する部分には非公式に賛成を表明しているSavino Pezzota CISL総裁やLuigi Angeletti UIL総裁も、18条の修正には批判的とされており、「本日までのところ、何らの協定にも署名はしていない」と明言している。

しかし、労組が当初の強固な態度を軟化させたのは、政府側が他の2つの修正を諦めたことに加え、他の労働法規(訓練契約や社会的有用労働など)に関してもそうであったように、適用除外に関する規定のためであった。これによって、従業員数が15人を超える企業には、3年間、試験的に労働者憲章18条が適用されないことになる半面注1)、この改革が実現すれば、「18条に関しては、これ以上のいかなる修正もしない」と政府は明言している。試験期間の3年を経て、さらに24カ月が経過すれば、適用を受ける企業の範囲は元に戻ることになる。

Roberto Maroni福祉大臣は、労働市場への復帰過程での労働者支援を目的とする他の重要な「能動的保護」制度改革が成功すれば、「3年の期間経過後には、急激な成長が見込めるであろう」と述べている。こうした観点から、民間サービスの拡大やより効果的な職業訓練・指導制度の確立による就業促進策の再編に加え、非自発的失業者に対して、現在よりも安定的かつ長期の手当(当初6カ月間は最終報酬の60%、7カ月目以降の3カ月間は40%、10カ月目以降の3カ月間は30%)の支給が提案されている。職業訓練や代替労働、非正規労働に関する義務を怠った場合には、この手当の支給は停止される。この改革のために、政府は、年間7億ユーロ以上の支出を確保すると約束している。

「かりに、18条の問題が部分的にしか解決されないとしても、イタリアの労働市場をこの先30年でより弾力化するための初めの一歩である」と、使用者団体であるイタリア工業連盟(Confindustria)のAntonio D'Amato委員長は述べている。

Pezzotta CISL総裁とAngletti UIL総裁は、「18条は修正されるわけではなく、単に適用除外が定められるだけである」と強調している。CISL総裁は、「たとえ、結果が出なかったとしても、試験的なものであるから、やり直しが利く。実験的試みであるから、継続する可能性はそれほど高くないが、何らかの損害が生じないか、注視する必要がある」と述べている。所得保障金庫でカバーされていない部門の所得保障を、労使の運営する機関に委ねるという案については、労使のいずれも好意的である。

注1)イタリアでは中小企業が大部分を占める。従業員数10以上の企業は、全体の5%弱にすぎない。

2.ストライキの急増

今年1月から5月にかけてのストライキ数が記録的に増加した。ISTAT(国立統計局)によると、この5カ月間にストライキのために失われた労働時間数は、前年同時期に比べ6.852倍も増えたとされている。重要なのは、こうしたストライキの大部分が、労働関係に関わりのない労組のキャンペーンによるものだったということである。ISTATによれば、ストライキに用いられた時間の実に91.8%(2030万時間に相当)が、マルコ・ビアジ教授暗殺後のテロ対策と労働者憲章18条擁護に関連するものであった。一方、経済的待遇や協約等の改正を求めるために用いられた時間は、この5カ月間でわずか180万時間にすぎない(この種のストライキは、金属加工部門と金融部門に集中している)。これは、前年同時期に比べ34.6%の減少である。

ストライキ急増の第一の波は、今年1月であり、労働者憲章18条の修正に関連して組織された(約340万時間)。しかし、これ以上に顕著な動きが生じたのが4月である。このときには、CGIL(イタリア労働総同盟)、CISL(イタリア労働者組合同盟)およびUIL(イタリア労働連合)が労働者憲章18条の修正に反対して、8時間のゼネストを組織したこともあり、ストライキに用いられた労働時間は、1590万時間にも達した。5月に入ると、労組の態度が軟化したために、ストライキのための時間はわずか8万時間に減少している。しかし、CGILが、労働者憲章18条の問題ばかりでなく、政府提案に対する反対運動を準備していることからすれば、今後は再びストライキが増加する可能性もあろう。

2002年ストライキのために失われた労働時間(1000時間)
1月 2月 3月 4月 5月
労働契約の更新 214 93 13 2 17
賃金の引き上げ 9 2 1 19 14
その他経済待遇の改善 193 153 323 22 31
解雇 41 50 88 35 11
雇用調整関連 19 1 1 - -
その他 119 144 164 19 7
労働関係に関連しないもの 3,471 366 468 15,969 -
4,066 809 1,058 16,066 80

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