労働市場低迷、失業者数394万人

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年9月

連邦議会選挙を3カ月後に控えた2002年6月10日、連邦雇用庁が2002年5月の労働市場統計を発表したが、失業者数は394万人で心理的な大台の400万人を割ったとはいえ、通常労働市場が改善するこの時期としては9年振の低調さだった。

統計によると、失業者数は、ドイツ全体では394万6000人で(欧州全体との比較で新たに取り入れられた算定方法では、失業率は8.3%)、前月比で7万8000人減少、前年同月比で22万6000人の増加だった。地域別では、西独地域では256万1000人、前月比で4万2000人増加、前年同月比で17万6000人増加、東独地域では138万5000人、前月比で3万6000人減少、前年同月比で5万人増加だった。就業者数は3834万1000人で、前月比で16万3000人の増加だった。

このように統計上は、昨年12月以来初めて失業者数が400万人の大台を下回ったが、この時期の雇用統計としては極めて低調で、前月比での失業者数7万8000人の減少は、9年振の低調さであり、また、前年同月比で失業者数が22万6000人増加していることも、4月の統計の失業者数が前年同月比で15万6000人の増加だったことと比べても、顕著な統計の悪化を示している。これを季節調整値で見ると、失業者数は404万3000人で、前月比で6万人増加しており、就業者数は3864万6000人で、前月比で1万3000人減少している。特に季節調整値での失業者数前月比6万人増加は、5年振の急激な増加であり、また、季節的影響を考慮しなければ、ドイツ全体の失業者数は400万人の大台を超えており、1999年12月と同じ水準ということになった。

このような労働市場統計の低調さは、雇用を創出するはずの経済成長が予想よりも低いことに基づき、この時期の失業者数の減少を少なくとも10万人と見積もっていたリースター労相も失望を隠さず、失業の低下が予期したほど進んでいないことを認めている。また、組織改革がなされた連邦雇用庁のフロリアン・ゲルスター理事長(前の長官に当たる)も、秋の総選挙までに労働市場の好転が起こることはほとんど期待できないとし、景気回復の影響が労働市場に現れるのは第4四半期以降になろうとしている。

このような5月の低調な労働市場統計について、野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は政府の労働政策を厳しく批判しており、秋の総選挙の中心テーマが失業問題になることはいよいよ確実となってきた。

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