民営化に向けた国営企業の労組の動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

市場の競争が激化する中で、企業の効率性を向上するため、経済危機以降、国営企業の民営化が進んでいる。特に、通信部門と金融部門の民営化は早急に行うべき課題との声が高い。以下、研究側のレポートにより、国営企業労組の動きをご紹介する。

交通・運輸・通信部門

  1. タイ港湾局(PAT)

    PATの労組は2002年4月10日、フォーラムを開催し、トレイラー・トランスポート1974社との合弁に反対する1200人の従業員の署名を集めた。トレイラー社はPATへの数百万バーツの貸付金があり、同社の経営者が内務省の国営企業担当副大臣の親類であることから、企業提携の案が浮上した。労組はこの企業提携と、バンコク港の民営化にも反対している。

  2. タイ電話公社(TOT)とタイ通信公社(CAT)

    両公社の民営化に伴い合併案が浮上しているが、TOTの労組は通信省の事務次官に対し、合併案反対の意向を記した書簡を提出した。TOT労組は合併によって大幅な利益損失となると反対している。これに対して、CAT労組は、赤字部門である郵便事業が含まれないのであれば、合併案によって何ら損失を被らないため反対運動は起こっていない。

金融部門

銀行部門の人員削減はそれほど進んでいないのが現状だ。1997年から現在まで、およそ20%の人員削減が行われたが、銀行業の将来を考慮すると、さらなる削減が必要とされている。実際にこの部門には、何千人ものいわゆる「窓際族」が存在し、問題になっている。

  1. サイアムシティ銀行とバンコクメトロポリタン銀行の合併

    財務省とタイ銀行は先に、サイアムシティ銀行とバンコクメトロポリタン銀行の合併を人員削減を行わずに決行することを発表した。しかし、合併後の2行の従業員数は7300人、支店数は209にも上り、2000人程度の人員削減が現実的ではないかとの見方がなされている。その理由は、隣接した70支店と、収益の低い支店を統廃合すること、また機械化、IT化のさらなる導入などを行うと、余剰人員が生まれると考えられているからである。

  2. その他の銀行の動き

    タイ農民銀行は、2002年の終わりまでに31の支店を閉鎖する予定となっている。アユタヤ銀行も、5回目の早期退職制度の募集を行っており、現在の8200人を7500人まで削減、2002年末までに20支店を閉鎖する見込みとなっている。タイミリタリー銀行も、第1回の早期退職制度を開始した。(1)の2行と同様に合併が予定されているクルンタイ銀行とバンコク銀行は、引き続き早期退職制度を行う。なお、クルンタイ銀行は本社をウイスキー製造会社の所有するエンパイア・ビルに移転する計画が浮上しており、同労組は、コストに見合わないこの移転計画に反対しているということだ。

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