MTUC、賃金評議会法の見直しを要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

マレーシア労働組合会議(MTUC)が1947年賃金評議会法の見直しを政府に要求している。MTUCによれば、使用者との賃金交渉の主体である労組に加入しているのは、1030万人の労働者のちわずか123万人で(12%)、そのため未組織労働者の大半は、一カ月に最低必要とされる賃金額を大きく下回る300?500リンギしか受け取っていないためだ。

政府、調査委員会を設置

MTUCの要求に先立って政府は5月9日、未組織労働者や労働協約制度のない部門の労働者の福利厚生を改善する目的で調査委員会の設置を決めた。フォン人的資源相は、サービス部門や農業関連部門の多くの職では、労働時間や賃金制度についての規定が設けられておらず、またそれらの改善を求める主体もいないため、賃金は低く抑えられてきたとの見方を示し、まずは状況を正確に把握するため、調査委員会を半島部、サバ、サラワクにそれぞれ2つずつ設置すると説明した。調査結果次第では、労働者の福利厚生の改善のために1947年賃金評議会法の改正もありうると述べた。

1947年賃金評議会法

1947年賃金評議会法は、組合を組織するのが困難な業種について賃金評議会を設置し、それに最低賃金を設定する権限を与えることを定めている。対象は(1)配膳・ホテル業、(2)店員、(3)映画館員、(4)船荷おろし労働者の4業種に限られており、また最賃額の見直しもあまりおこなわれていないため、ほとんど機能していない。

MTUCの反応

MTUCは5月18日、政府の方針を歓迎しながらも、政府はまずもって賃金評議会法の見直しに取りかかるべきとの見解を示した。

マレーシアには上記の4業種を除いて最低賃金制度は存在しないため、組合に加入してない労働者の賃金は、市場の需給関係により決定されている。そのため、900万人以上いる未組織労働者の大半が、1カ月に最低必要な賃金額=900リンギ(MTUC算定)を大きく下回る300?500リンギしか受け取っていない。また最賃が存在する4業種についても、現在の最賃額が350リンギと低額であるため、これを盾に労働者の賃金を低く抑える使用者がいる、とMTUCは見ている。

MTUCは、こうした事態に至ったのは政府が賃金評議会法の見直しを怠ってきたからだとして、早急に見直すよう要求した。具体的には、(1)同法の適用対象を全部門の低賃金労働者に拡大すること、(2)休眠状態の賃金評議会の活動を再開させること、(3)雇用法、従業員社会保障法、従業員積立基金法などの改正も視野に入れた包括的な労働者保護政策を示すこと-が主な内容となっている。

最低賃金制度をめぐる動き

上述したように、マレーシアには全労働者を対象にした最低賃金制度がなかったが、80年代以降の高度成長にともなう生活水準の高度化を理由に、MTUCは法定最賃の導入を政府に求めてきた。最近では2000年に、はじめて具体的な最賃額(900リンギ)を提示して導入を求めたが、生産性連結賃金制の導入を求める使用者の強硬な反対にあって棚上げのままになっている。政府は一貫して最賃不要の立場をとってきたが、このときには、最低賃金制と生産性連結賃金制を組み合わせた新しい賃金制度を導入すべきとの見解を示すなど、政府の立場に変化が見られる(本誌2000年9月号参照)。

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