大卒4万4000人が就職できず
―半がブミプトラ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

大卒者の間に就職難が広がっており、現在4万4000人が就職できずにいるが、その大半が人文系科目を専攻したブミプトラ(注1)である。事態を重く見て政府は4月に関連閣僚をメンバーとする委員会を設置。同委員会は対策の一つとして人文系の学生に「市場向きの」科目も併せて専攻させる二重専攻制を導入する方針を固めている。

国家経済評議会(NEAC)によれば、約4万4000人いると見られる大卒失業者のうち政府の訓練スキームに登録しているのは2万4728人。これらを専攻科目別に見ると、人文系=31.1%、経済学=11.3%、会計=9.2%、経営管理=8.8%、イスラム研究=8.6%、科学系=7.8%、工学=5.5%、その他=8.6%となっている。

人種別では、マレー人などのブミプトラがほとんどで94%を占めており、華人系は3.7%、インド系は1.6%となっている。全人口の人種別内訳は、ブミプトラが58%、華人系が25%、インド系が7%、その他が10%であるから、ブミプトラ大卒者の就職難が顕著であることがわかる。

政府の大卒失業者対策

近年の景気低迷によって解雇者が増大するとともに、とくに大卒失業者が目立って増えてきたことから、政府は2001年11月に「失業中の大卒者向け実習・訓練プログラム」として(1)修士課程進学スキーム、(2)政府関係機関での体験・訓練スキーム、(3)公立大学での補助教員としての実習、(4)政府機関での補助調査員としての実習、(5)農業起業家育成スキーム、(6)民間の専門企業での実習・訓練、(7)中小企業での情報通信技術の実習-の7種類のスキームを導入している(詳しくは本誌2002年1月号参照)。

今回の対応

しかし今のところ思うような成果がでておらず、大卒失業者が未だに約4万4000人もいることから、政府は大卒失業者の雇用対策を新たな視点から策定するため、人的資源相、教育相、通産相、青年スポーツ相、起業家育成相からなる閣僚委員会を4月に設置した。

閣僚委員会は、上記の訓練プログラムに登録した大卒失業者2万4728人の内訳から人文科目専攻のブミプトラがとくに就職難にあると判断し、対策の第1弾として公立大学の専攻制度を変える方針を打ち出した。

提案によると、人文系の学生については、従来のアカデミックな専攻科目のほかに、実用的ないし「市場向け」科目の専攻を義務づける。たとえば、イスラム研究とマーケティング、文化人類学と経済学というように二重専攻を義務づける。

今回の案について、閣僚委員の一人であるフォン人的資源相は、学生はアカデミックな関心を満たしつつ労働市場の需要にも応えることができ、政府が同案を採用する公算は高いと述べている。

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