ドイツ労働総同盟、新会長にゾマー氏選出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

ドイツ労働総同盟(DGB)では、シュルテ会長の引退表明後の会長人選をめぐり、傘下の有力産別労組間で主導権争いが見られたが(時報2002年3月号第3記事参照)、その後ミヒャエル・ゾマーVerdi副委員長の就任が確実視されるにいたり、5月28日開会された第17回連邦大会の代議員選挙で同氏が圧倒的多数の支持を得て選出され、正式にDGB新会長に就任した。

ゾマー氏(50才)は、再編によって現在8団体に整理されたDGB傘下の産別労組の400人の代議員の94%の支持を得て、強固な支持基盤のもとにナショナルセンターを率いることになったが、この支持率はシュルテ前会長が前回再選されたときの80%を大きく上回っている。

同氏は、19才のときにVerdiに合併する前のドイツ郵便労組(DPG)に加入し、在学中の70年代半ばには、旧東独の政権党社会主義統一党(SED)のベルリン支部の学生団で活動した経歴もあるが、1980年以降DPGでも専従の幹部職員として頭角を現し、1993年以降DPG執行部委員を務め、2001年3月の5労組合併によるVerdi設立(本誌2001年6月号II参照)とともに副委員長に就任した。またドイツ・テレコムやポスト・バンクの監査役会にも名を連ねている。

同氏は闘争的リーダーシップの持主といわれており、DGB会長就任にあたり、以下のような抱負を述べている。

  • 使用者団体と比べて、政治的議論におけるオピニオンリーダーとしての地位を最近の労組は失っているが、その地位を取り戻すように努める。
  • 緊急の課題として、DGB所属組合員の減少をくい止める。DGB所属組合員数は、2001年末で約790万人で、過去10年間で約390万人減少している。
  • 「雇用のための同盟」は維持して行くが、この同盟は議会の代替物ではないし、社会的公正に即して社会改革を司るセンターでもないので、その役割を大量失業に対処することに限定していく。
  • 民主社会党(PDS:旧東独政権党SEDの後身で、州政府レベルでは政権に参加している)の連邦政府レベルでの政権参加には反対し、その参加がなければ9月の連邦議会選挙の結果、野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が政権につく場合でも同様である。
  • 経済政策に関しては、過去20年間のネオ・リベラリズムの政策に反対し、社会的公正を重視する。この批判は、現シュレーダー連立政権に対しても当て嵌まるとする。

このような抱負を打ち出すとともに、ゾマー氏は近づく総選挙については、過去数カ月間労組が社会政策の後退等を理由に、与党社会民主党(SPD)に距離ををおいてきた姿勢を修正している。労組は連邦大会直前からSPDを前向きに評価し始め、シュルテ前会長は退任前の記者会見等で、CDU・CSUと異なり、SPD政権のもとではドイツの労働市場に米国流の「雇用と解雇」("hire and fire")の関係が入り込む余地はないとして、SPD支持を打ち出し、会長として最後の大会の冒頭演説でも同様の趣旨を表明した。ゾマー氏もこの立場を踏襲し、SPD連立政権の4年間はその前のCDU・CSU連立政権の16年間よりも労働者に多くをもたらしたとして、SPD支持を明確にした。もっとも1998年の総選挙では、DGBは800万マルクをSPD指示の選挙キャンペーンに投入して政権交替に尽力したが、今回の支援額は50万ユーロで、資金面ではそれほどの肩入れはしていない。

ちなみにDGB副会長には、連邦雇用庁のスキャンダル(本誌2002年5月号I参照)で、DGB代表としての立場から批判を受けたウルズラ・エンゲレン・ケーファー女史(58才)が、支持率は85%で低かったが、再選された。

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