雇用差別をめぐる動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

労働力人口に占める女性の割合は現在、約45%で、女性の社会進出が着実に進んでいることがうかがえる一方、就労先が一部の職種に偏っていたり男性との賃金格差が縮まらないなど性別による雇用差別に解決すべき課題は少なくない。また人種による雇用差別では、関連団体が人種的マイノリティーが管理職に就きづらい状況に改善が見られない点を批判しており、さらに年齢による差別については、これを禁じるEU指令を国内法化する期限がせまっていることから、政府は中高年を差別するような求人広告を違法にする方向で検討を進めているなど、雇用差別に対する関心が広まっている。

女性の職場進出

機会均等委員会(EOC)は6月3日、エリザベス二世の在位50年を記念して、女性の職場進出に関する調査報告を発表した。それによると、労働力人口に占める女性の割合は、1951年には29.5%であったが、50年後の2001年には44.6%とほぼ半分を占めるに至っている。また管理職に占める女性の割合も同期間に15%から30%へ2倍に増えており、さらに専門職に占める割合については、8%から42%へと著しく増加している。

このように女性の労働市場への参入は着実に進んでいると認められる一方、就労先については一定の職種に集中する傾向が見られる。たとえば、事務職に占める女性の割合は1951年には60%であったが、2001年には79%に、また販売員については同52%から70%に、それぞれ増えている。

賃金についてみると、男女とも正社員である場合の格差は18%だが、男性正社員と女性パートタイマーの格差は41%にもなる。オランダでは同格差はわずか7%であることから、EOCはパートタイムの管理職・専門職を増やすなどすれば格差はもっと狭まると述べている。

人種による雇用差別

人種平等委員会(CRE)のシン委員長は5月半ば、同月末から施行される新たな人種差別関連規則の対象から民間企業が除外されたことに関連して、それを政府に働きかけていた英国産業連盟(CBI)を非難するとともに、人種的マイノリティーを管理職に就かせる努力が民間企業に見られない場合には、新たな反差別法の導入を政府に提案せざるをえないと警告した。

民間シンクタンク、ラニーミードゥ・トラストが2年前に行った調査では、FTSE100社の上級管理職に占める人種的マイノリティーの割合は、わずか1%にすぎなかったが、シン委員長によれば、それから今日まで、まったく改善が見られていない。また大卒者の就職についても、マイノリティーが自分に適した職を探す際の難度は白人の5倍であるという。

同委員長は、公正な雇用慣行が競争優位の一因であることに企業は早く気づくべきだと訴えているが、事実、マイノリティーの雇用がもはや死活問題になっている地域もある。イギリス第二の都市、バーミンガムでは、今後10年間に専門職の雇用が6万人増えると予測されているが、この需要に応えるにはアジア系や黒人を大量に採用しなければ対応できない。

政府、年齢差別防止のため新規則

年齢による雇用差別を禁じるEU指令を国内法化する期限が2006年末にせまり、政府は新規則の準備を始めている。規則が施行されれば、中高年の排除を示唆する求人広告は違法となる。また、これまでの慣習的な定年年齢を超えて就労することも可能となる。

政府が年齢差別を禁じようとしているのは、EU指令の国内法化の必要性や労組に対する配慮だけからではない。「年齢に関する使用者フォーラム」の最近のレポートによれば、年齢差別を原因とする経済的損失は年間310億ポンドにのぼっており、政府は、年齢差別の撲滅が生産性向上につながると期待している。

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