テレワーカーが急増

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年8月

情報通信技術(ICT)を利用して時間と場所に制限されずに働く、いわゆるテレワーカーが急速に増えている。政府統計局(ONS)によれば、2001年にテレワーカーは220万人に達し、労働力人口の7.4%を占めるに至った。1997年と比較して65%増加しており、今後もこの傾向は続くと見られている。

「テレワーカー」--英国政府の定義

「テレワーク」とは一般に、コンピューター、ファックス、電話などの情報通信機器を利用して、自宅など会社から離れた場所で働く、新しい就労形態を指し、それを遂行する人を「テレワーカー」と呼ぶが、今のところ一致した定義はない(後段「テレワークとは」参照)。

英国政府統計局が労働力調査(LFS)の一環として1997年から毎年実施している調査では、「調査対象の一週間に最低1日自宅で有無給の仕事をし、コンピューターと電話を利用した人」を「テレワーカー」とし、このうち「コンピューターと電話がなくては仕事を遂行できない人」を「TCテレワーカー」としている(以下、とくに後者について言及するときはTCと表記)。

調査結果

今回、2001年春に実施した調査の結果が発表され(『労働市場動向』2002年6月号)、その時点でイギリスにテレワーカーは220万人(TC=180万人)おり、労働力人口の7.4%を占めていることがわかった。1997年に調査を実施して以来、テレワーカーは毎年平均で13%増加し、2001年までに65%増大した。

220万人のうち、官民別では民間が74%、男女別では男性が67%であった。また従業上の地位については(TC)、雇用者が55%、自営業者が43%、家族従業者が2%であった。労働力人口全体では自営業者は11%しか占めていない点からすると、テレワーカーに占める自営業者の比率は小さくない。ただし、97年から2001年までの増加率については、雇用者が88%で、自営業者は52%であった。

職種別で見ると、専門職、管理職、技術職に多く見られ、また産業別では、不動産・賃貸・ビジネスサービスがもっとも多く、全体の約25%を占め、建設業、製造業がこれに続く。

国際比較

[アメリカ]

まず、テレワーク先進国であるアメリカについては、1999年以来毎年アメリカテレワーク協会(ITAC)がAT&Tの後援で調査を実施している。テレワーカーの定義がLFSと異なるため、イギリスと直接比較することはできないが、ITA(2001)によると、アメリカにはテレワーカーは2800万人おり、労働力人口の約21%を占めるに至っている。また前年の調査によれば、就労場所としては路上(24.1%)と自宅(21.7%)が多く、いわゆるテレワークセンター(7%)やサテライトオフィス(4%)は少ない。

[EU]

EUについては、ドイツの民間リサーチ・コンサルティング会社であるEmpirica社が1998?2000年に、EU委員会などから資金援助を受け、10カ国を対象に調査を実施した(テレワーカーの定義はやはりLFSとは若干異なる)。

その報告書EcaTT(2000)によると、対象10カ国のうち労働力人口に占めるテレワーカーの割合がもっとも高いのはフィンランドで16.8%。イギリスは7.6%で、EU10カ国平均の6.1%をやや上回る。その他ドイツ6.0%、フランス2.9%などとなっている(表参照)。

EU諸国におけるテレワーカー人口と労働力人口に占めるその割合
テレワーカー人口 割合(%)
フィンランド 355,000 16.8
スウェーデン 594,000 15.2
オランダ 1,044,000 14.2
デンマーク 280,000 10.5
イギリス 2,027,000 7.6
ドイツ 2,132,000 6.0
アイルランド 61,000 4.5
イタリア 720,000 3.6
フランス 635,000 2.9
スペイン 357,000 2.8
10カ国平均   6.1

出所:EcaTT(2000)

[日本]

日本については、日本労働研究機構(1995)(1998a)(1998b)(2000)がテレワーク関連の実態調査を実施しているが、テレワーカー人口の調査は行われていない。ただし、日本テレワーク協会は、主要7都市の5000社とその従業員1万2300人にアンケート調査を実施し、その結果にもとづいて、日本のテレワーカー人口を2000年時点で246万人と推計し、5年後の2005年には445万人に増加すると予測している(同(2000))。

「テレワーク」とは

「労働の場所を制限されない働き方」を示す用語としてもっとも広い意味をもつのが「テレワーク」である。いわゆる「在宅ワーク」「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」などは、労働の契約形態と労働の場所の観点から分類されたテレワークの諸類型といえる(図表参照)。

テレワークの諸類型
    労働の契約形態
    請負 雇用
労働の場所 自宅 在宅ワーク(情報通信危機の利用)
家内労働
在宅勤務
自宅以外 テレワークセンター等での労働 サテライトオフィス勤務
直行直帰型勤務

出所:神谷隆之(1999)、10ページ

2002年8月 イギリスの記事一覧

関連情報