テレワーカーが急増
情報通信技術(ICT)を利用して時間と場所に制限されずに働く、いわゆるテレワーカーが急速に増えている。政府統計局(ONS)によれば、2001年にテレワーカーは220万人に達し、労働力人口の7.4%を占めるに至った。1997年と比較して65%増加しており、今後もこの傾向は続くと見られている。
「テレワーカー」--英国政府の定義
「テレワーク」とは一般に、コンピューター、ファックス、電話などの情報通信機器を利用して、自宅など会社から離れた場所で働く、新しい就労形態を指し、それを遂行する人を「テレワーカー」と呼ぶが、今のところ一致した定義はない(後段「テレワークとは」参照)。
英国政府統計局が労働力調査(LFS)の一環として1997年から毎年実施している調査では、「調査対象の一週間に最低1日自宅で有無給の仕事をし、コンピューターと電話を利用した人」を「テレワーカー」とし、このうち「コンピューターと電話がなくては仕事を遂行できない人」を「TCテレワーカー」としている(以下、とくに後者について言及するときはTCと表記)。
調査結果
今回、2001年春に実施した調査の結果が発表され(『労働市場動向』2002年6月号)、その時点でイギリスにテレワーカーは220万人(TC=180万人)おり、労働力人口の7.4%を占めていることがわかった。1997年に調査を実施して以来、テレワーカーは毎年平均で13%増加し、2001年までに65%増大した。
220万人のうち、官民別では民間が74%、男女別では男性が67%であった。また従業上の地位については(TC)、雇用者が55%、自営業者が43%、家族従業者が2%であった。労働力人口全体では自営業者は11%しか占めていない点からすると、テレワーカーに占める自営業者の比率は小さくない。ただし、97年から2001年までの増加率については、雇用者が88%で、自営業者は52%であった。
職種別で見ると、専門職、管理職、技術職に多く見られ、また産業別では、不動産・賃貸・ビジネスサービスがもっとも多く、全体の約25%を占め、建設業、製造業がこれに続く。
国際比較
[アメリカ]
まず、テレワーク先進国であるアメリカについては、1999年以来毎年アメリカテレワーク協会(ITAC)がAT&Tの後援で調査を実施している。テレワーカーの定義がLFSと異なるため、イギリスと直接比較することはできないが、ITA(2001)によると、アメリカにはテレワーカーは2800万人おり、労働力人口の約21%を占めるに至っている。また前年の調査によれば、就労場所としては路上(24.1%)と自宅(21.7%)が多く、いわゆるテレワークセンター(7%)やサテライトオフィス(4%)は少ない。
[EU]
EUについては、ドイツの民間リサーチ・コンサルティング会社であるEmpirica社が1998?2000年に、EU委員会などから資金援助を受け、10カ国を対象に調査を実施した(テレワーカーの定義はやはりLFSとは若干異なる)。
その報告書EcaTT(2000)によると、対象10カ国のうち労働力人口に占めるテレワーカーの割合がもっとも高いのはフィンランドで16.8%。イギリスは7.6%で、EU10カ国平均の6.1%をやや上回る。その他ドイツ6.0%、フランス2.9%などとなっている(表参照)。
テレワーカー人口 | 割合(%) | |
フィンランド | 355,000 | 16.8 |
スウェーデン | 594,000 | 15.2 |
オランダ | 1,044,000 | 14.2 |
デンマーク | 280,000 | 10.5 |
イギリス | 2,027,000 | 7.6 |
ドイツ | 2,132,000 | 6.0 |
アイルランド | 61,000 | 4.5 |
イタリア | 720,000 | 3.6 |
フランス | 635,000 | 2.9 |
スペイン | 357,000 | 2.8 |
10カ国平均 | 6.1 |
出所:EcaTT(2000)
[日本]
日本については、日本労働研究機構(1995)(1998a)(1998b)(2000)がテレワーク関連の実態調査を実施しているが、テレワーカー人口の調査は行われていない。ただし、日本テレワーク協会は、主要7都市の5000社とその従業員1万2300人にアンケート調査を実施し、その結果にもとづいて、日本のテレワーカー人口を2000年時点で246万人と推計し、5年後の2005年には445万人に増加すると予測している(同(2000))。
「テレワーク」とは
「労働の場所を制限されない働き方」を示す用語としてもっとも広い意味をもつのが「テレワーク」である。いわゆる「在宅ワーク」「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」などは、労働の契約形態と労働の場所の観点から分類されたテレワークの諸類型といえる(図表参照)。
労働の契約形態 | |||
請負 | 雇用 | ||
労働の場所 | 自宅 | 在宅ワーク(情報通信危機の利用) 家内労働 |
在宅勤務 |
自宅以外 | テレワークセンター等での労働 | サテライトオフィス勤務 直行直帰型勤務 |
出所:神谷隆之(1999)、10ページ
2002年8月 イギリスの記事一覧
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