労働市場の改善が一時停止した2001年

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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雇用統計と失業統計から判断すると、継続していたスウェーデン労働市場の改善は明らかに2001年に停止した。

もちろん、これが労働市場改善が更に続く前のほんの短期的な停滞なのか、情勢悪化の前ぶれとしての停滞なのかは今のところ明らかでない。専門家の中には、この停滞の原因が9月にニューヨークで起きた同時多発テロの余波であると考えるものもいる。しかしそれは単なる憶測に過ぎず、別のより可能性の高い説明が考えられる。すなわち、2001年初頭に多くのIT(情報技術)部門企業が破綻した。その原因の一端は同部門における開業の過多にあるが、新規事業による利益期待があまりに楽観的であったことにもよる。その結果はまず業績に表れたが、当然雇用統計にも表れた。例えば、製造業の雇用は2001年1月を境に下降し始めている。

経済全体としては、2001年の雇用は比較的安定していた。これには教育、研究、医療、公共部門における雇用の増加が寄与した。これらの部門は1990年代初期の不況によってひどく打撃を受けた。しかし、それ以降、特に教育・研究部門は、大幅な経済の構造調整に適合した技能養成などに重要な役割を演じ、劇的な拡大を続けてきた。

教育・研究部門の雇用者数は過去5年間で合計10万人近く増加した。同部門雇用者のほぼ3分の1にあたる増加である。そしてこれまでのところ、この成長が止まりそうな兆候はない。

1994?97年の4年間以上にわたって労働力人口の12%以上が失業していた。失業期間は1年を越えないのが通常であるから、労働力人口の極めて大きな割合が影響を受けていた事になる。一部の人々は一度ならず失業を経験したことを認めたとしても、この結論はやはり正しい。

建設部門は恐らく1990年代初期の経済危機の影響を最も強く受けた部門だろう。雇用の3分の1が失われた。雇用状況はいくぶん改善しているとはいえ、回復はまだ微々たるものである。

スウェーデンが経済通貨同盟(EMU;ユーロ通貨圏)に加入するつもりであれば、賃金上昇率をEMU圏の他の諸国並まで低くしなければならないとよく言われる。90年代には、失業率が高かった期間を除くと、スウェーデンの賃金上昇率の方が高い場合が多かった。過半数の国民がEMU加入に反対していたため、この懸念は、つい最近まで仮説的なものにとどまっていたが、最近では過半数の国民がEMU加入に賛成し始めている。

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