IGメタル、警告ストを実施

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年6月

連邦議会選挙を6カ月後に控え、金属業界の賃金協約交渉の対立色が強まる中、シュレーダー首相(社会民主党SPD)は再三労使双方に、労働争議に至る事態を避けるように働きかけたが、金属連盟の回答を不満とするIGメタルは、2002年3月25日にまず東独地域で警告ストを実施し、本格争議に発展する可能性も否定し得なくなった。

IGメタルが1月に賃上げ6.5%の統一要求(協約期間1年)を出して以来、統一サービス労組Verdiも6.5~7%の高額要求を提出し、化学労組(IG BCE)の5.5%を除いて、IGメタルの対立路線を踏襲する動きが進展していたが、このような中で金属連盟が3月15日、IGメタルの賃上げ要求に対する回答を発表した。

金属連盟は、賃上げを2段階に分け、まず2002年度は3月1日に遡及して賃上げ2%、次に2003年3月からさらに賃上げ2%とし、賃金協約の有効期間を2年と回答した。さらに、IGメタルが今年の賃金協約交渉で取り上げることを強く主張していた労働者(Arbeiter)と職員(Angestellte)の賃金格差を解消する報酬基本労働協約(Entgeltrahmentarifvertrag: ERA)の締結については、これを認めるものの、ERAに要する企業のコストは、回答された賃上げの範囲で賄われるべきで、企業はそれ以上のコストは負担しないとした(IGメタルは、6.5%の賃上げでERAも賄うと主張している)。

このような回答に対してIGメタル側は強く反発し、すべての交渉地区で回答の受け入れを拒否し、警告ストの実施を示唆した。ツビッケルIGメタル委員長は、ドイツの株式市場に上場されている大企業の取締役の給与が、1998年から2000年の期間に平均64%上昇していることを指摘し、使用者側の回答は余りにも少額であるとし、復活祭(3月31日)までに回答を是正するように要求した。

これに対して、カネギーサー金属連盟会長は回答の是正を拒否し、逆にIGメタルに対して、ERAを締結するにしても、企業に余分なコストがかからないように、具体的な方策を示すべきであるとした。

このように金属業界の労使の主張が真っ向から対立する中で、シュレーダー首相は3月20日、使用者団体トップと会議を開き、会議後労使双方に対して、ドイツ経済全体を考慮し、景気回復に悪影響を与えないように、協約締結に当たっての理性的な対応を訴えかけた。しかし、労働総同盟(DGB)を中心に労組側は、最近シュレーダー政権に対してその社会政策の後退などを批判して、秋の総選挙との関係でも一定の距離をおき始めており、同首相の呼びかけに容易に応じず、IGメタルも対立路線を変更せず、同労組は3月25日、平和義務(注1)の拘束を受けないブランデンブルグ州等の東独地域で、従業員の1時間の職場放棄を指令して、警告ストを実施した。

その後、西独地方でも、重点地区のバーデン・ビュルテンベルグ州で第4回交渉が不首尾におわり、交渉は4月8日まで延期されるに至り、3月29日に平和義務の期限が切れるまでに交渉がまとまらないことが確定した。IGメタルは、4月8日以降ドイツ全土で警告ストを実施するとしており、さらに4月末までに協約交渉がまとまらない場合は、交渉決裂を宣言して、無期限のストライキに突入するための全組合員の原投票(Urabstimmung)を行うとしている。

このように、総選挙を控えて、労使交渉の中心となる金属業界の協約交渉は、シュレーダー政権の意に反して難航し、本格的な争議に発展する可能性も出てきており、他の業界に対する影響の面でも、今後の進展が注目される。

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