【続報】マレーシアのインドネシア出稼ぎ労働者暴動に発した出稼ぎ論議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

2002年1月に、マレーシアで2回の暴動を起こしたインドネシア人出稼ぎ労働者の問題をめぐって、インドネシア国内では、その後の海外出稼ぎに関する議論が盛んに報じられた。今回の事件が、インドネシアの高い失業率と停滞する経済という2つの問題を一挙に緩和する「一石二鳥」効果があるとされる、海外出稼ぎに与えた影響を報告する。

波紋を呼んだマレーシア政府のインドネシア労働者新規受入停止

インドネシア人出稼ぎ労働者のマレーシアにおける暴動事件後マレーシアは、インドネシア人のプランテーション労働者とメイド以外の新規就労を禁じ、外国人労働者の受け入れに関して、「インドネシアをプライオリティー最後の選択肢」とする方針を明らかにした。

受け入れ側の視点

事件後のマレーシアの現地紙『スター』によると、最近外国人労働者の問題が顕著化している事態を受け、「問題を起こしているのは必ずしもインドネシア人だけではない。ミャンマー人やアフリカ系の労働者も大量に流入しており、問題をインドネシア?マレーシア間のものに限定することは非現実的」とし、「労働争議や暴動といった問題は、受け入れ側の経営者にも何らかの原因があったはず。そこを議論しなくては根本的な解決は望めない」とインドネシアに対する同情の姿勢もうかがわせた。また、今後の外国人労働者の問題については、政府だけでなく、NGOやボランティア団体といった草の根の市民活動が主体となって解決にあたることが期待されると述べている。

国内で解決しきれない失業問題

前労働大臣で現在雇用開発センター(CLDS)のボメル所長は、2002年2月15日、2002年の失業者数は4200万人、そのうち大学新卒者は190万人に上る可能性があることを明らかにした。この数字は、週の労働時間が35時間以下の不完全就労者も含んでいる。

この予測によると2004年には就労人口の半数近い4500万人が失業または不完全雇用状態にあると推測され、失業者は年々増加する傾向が見込まれている。2004年には大統領選挙も控えており、失業問題と政治問題がピークに達しそうだ。

ボメル所長は、「労働政策のビッグバン的な改革が必要」とし、センタノ同研究所専門員も、「投資家に魅力ある国づくりを長期的な視点で行う必要がある。政治と治安の安定化も必須。観光客も、治安の問題からシンガポールで止まっている」とコメントしている。

識者の中からも、国内の高い失業率の解消方法として、海外出稼ぎを推進すべきとの意見が聞かれる。また国の政策もそのような方針となっている。

しかし、国内問題を単純な海外への出稼ぎという形で解決していいものか、という議論もおこっている。

2002年3月4日にはハッサン外相が、国民議会第1委員会で、「マレーシアで就労するインドネシア人出稼ぎ労働者問題が、2国間の外交関係に影響は及ぼさないことで合意に達した」と発表している。

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