欧州委員会、人の移動を促進するための行動計画を採択

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

欧州委員会は、2002年2月に労働者が転職や国の移動を行うにあたっての障害を除去することを目的とした行動計画を採択した。この中で欧州委員会は3つの主要な課題とそれに取り組むための方策を提案している。同行動計画は、2001年12月に公表された技能と労働移動に関する上級特別委員会の報告書に基づき作成され、2002年3月に開催されるバルセロナ・サミットに提出される予定である。

行動計画

同行動計画は、3つの主要な課題として「不十分な労働移動」「地理的移動の少なさ」「人の移動に関する情報不足」を挙げている。まず「労働移動」については、2000年のデータによると現在の仕事について1年未満の者の割合がEUでは16.4%であったのに対し、米国では30%であった。「地理的移動」に関しては、1999年にEUでは1.2%の者が居住地を変えていたが、米国では5.9%の者が郡を移動していた。

こうした現状を踏まえ、欧州委員会は2005年までにある程度の人の移動の進展をめざし、多くの提案を行っている。

第1に「労働移動」については、

  1. すべての人に無料で基本的な技能を取得できるよう具体策を練る
  2. 数学、科学技術分野の学生(特に女性)を増やすための目標を設定する
  3. 若年障害者や学習障害者、移民などの教育制度への十分な統合を進める
  4. 教育と労働の世界のつながりを強化する
  5. 特に高齢労働者を対象とした企業内訓練制度の拡充
  6. 情報通信技術技能のEUレベルでの定義や基準の確立
  7. 異なった団体や国における資格の蓄積について標準化制度を創設する
  8. 人的資源開発のための財源を増やす

等が提案されている。

第2に「地理的移動」を促すための提案としては、

  1. 加盟各国を移動する労働者の社会保障上の権利を効果的に維持する
  2. EU医療保険カードの創設
  3. ポータブルな補足年金権の確立
  4. 自営業者・企業経営者の自由移動に対する障害をなくすための努力を強化する
  5. 加盟各国内での地域的移動を促進するための税制・社会保障手当の改革
  6. 外国語の早期習得機会の拡大
  7. 労働協約における資格・技能に対する地域的、あるいは全国的な制限を取り除く
  8. 共通の移民政策に関する合意

等が示されている。

第3に「情報提供」に関しては、

  1. インターネット上に人の移動に関する情報を一括提供するサイトを立ち上げる
  2. EURES制度(オンライン上の職業紹介サービス)の拡大
  3. 人の移動に関するEUレベルでの情報提供活動を展開する

という提案が行われている。

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