労組も批判、30B医療制度

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

2002年1月からバンコクにも適用された、低所得者層を対象にした30バーツ(B)医療制度だが、その制度面での問題に労組も批判し始めている。

労組も疑問視

労組のリーダーらは、現行の社会保障基金の加入者が30B医療制度に強制的に組込まれる現在のシステムに異を唱えている。

タイ最大のナショナルセンターであるタイ労働会議(LCT)のプラチュアン議長は、労使の代表19団体と合同で、社会保障基金と国民健康保険の統合を行わないように正式な反対書面をタクシン首相に提出したい、という意向を明らかにした。

社会保障基金と国民健康保険の統合によって、30B医療制度の対象者が病院へ通院し診察するごとに社会保障基金に30バーツの負担がかかることになる。

また、社会保障基金ではすべての疾患を対象にしているのに対して、30B医療制度は治療対象が限定されている(歯科や美容整形は対象外)。

この統合案は、2001年11月に国会に提出され、可決された。

プラチュアン議長は、同委員会が社会保障基金の加盟者に対して意見も求めずにこのような決定に踏み切ったことに対して憤慨しているとし、「我々は、この決定は国家権力の圧制だと思っている。使用者も労働者もこの決定に賛成するものはいない。国民健康保険が効率的で、社会保障基金の加盟者が統合後も、従来と同様の手当を受けられることを保証して欲しい」と語った。

30B医療制度に対する批判は以前から出ていたが、最大の問題点はその財源であった。当初政府は30B医療制度をカバーできる財源がないのにもかかわらず、制度を開始し、最終的に社会保障基金と公務員を対象とした医療制度を合併するのでは、と批判されていたが、結果的にその予測が的中したことになる。

精神科も負担

30B医療制度の対象となっている精神科では、処方する薬が高価な割に政府からの補助金が少ないことが問題となっている。精神病はその性質上、薬を長期間服用することが多く、薬の単価の高さに加えて長期間の提供がコスト増に拍車をかけている。

精神的な病気に悩まされる患者は、低所得者層にも多く、彼らが30B医療制度を利用して診察に来た場合、採算が合わなくても診察せざるをえないという事情ある。

出稼ぎ労働者やホームレスのメンタルケア

主に貧困者を対象にしているこの医療制度は、①国が定めたいくつかの基準(所得額など)を満たしている、②各地方の衛生局に登録する、③認定後、IDカードを受け取るという、3つの手続きを行って初めて利用できる。

しかし、精神的なケアが最も必要とされる農村から都市への出稼ぎ労働者やホームレスの人々は、先に上げた登録手順を踏んでいないことが多く、せっかくの制度が利用できない状況にあることも問題となっている。

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