ASEANの投資ハブに10万人の雇用創出も

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

タイ国家投資委員会(BOI)は、ASEAN域内の外国直接投資(Foreign Direct Investment: FDI)額1位を目指して努力していくことを明らかにした。BOIは2004年までに現在3位の域内FDIを増加させるための様々な政策展開を行う。

ASEAN域内の投資ハブに

UNCTADのWorld Investment Report 2001によると、ASEAN域内のFDI1位はシンガポールで63億9000万米ドル、2位はマレーシアで55億4200万米ドル、3位がタイで24億4800米ドルとなっている。

シンガポールは1989年以来ASEAN域内でFDI受け入れ額1位の座を継続させているが、タイはここ数年マレーシアに2位の座を奪われている。

そこでタイ投資委員会(BOI)は、2004年までにタイがASEAN域内の投資ハブになるよう、様々な努力をしていくことを明らかにした。

雇用も10万人創出を目指す

BOIによると、全国の技術系大学・短大・専門学校の卒業生の4分の1に当たる10万人を、FDI優遇によって吸収できると目論んでいる。チャクラモンBOI事務総長は、「投資のインセンティブを海外の企業に提供することにより、企業はタイでの経済活動を行うことができ、タイは技術の向上や労働者の質を向上させることができ、製造業の基礎を強化することができるであろう」と述べている。

日系企業とタイ

タイにとっては、日本が3年連続で投資額、投資件数ともに1位となっているが、日本にとってタイは、中国とアメリカに続き、投資額は第3位となっている。

投資額では1位が日本(834億バーツ)、2位アメリカ(401億バーツ)、3位マレーシア(279億バーツ)となっている。投資件数でも、1位日本(257件)、2位シンガポール(51件)、3位台湾(50件)である。

世界不況の影響を受け、2001年は2000年に比べると各国ともにタイへの投資額を減少させているが、台湾とシンガポールは特に大きな減少となっている。

日本の自動車メーカーも投資規制の緩和によりタイでの精算を検討中

従来、自動車メーカーはタイ投資委員会が定めた工業ゾーン(ゾーン1から3まであり、1はバンコク周辺で、優遇政策が最も低い。ゾーン3は主に東北部などの地方で、優遇政策が多数用意されている。工業の地方分権化を狙った政策)での生産しか許可されておらず、ゾーン3のみでの操業がなされていた。しかし、今回の規制緩和によってゾーン3と同等の優遇政策が、よりバンコクに近いゾーン1と2で受けられるようになった。

日本の自動車生産トップのトヨタは、1トンクラスのピックアップトラックの生産を、ゾーン2で行う計画が現実化しそうだ。

トヨタは現在あるサムットプラカン工場へ300億円(98億バーツ)投資し、そこでの生産量を2004年までに3倍の15万ユニットまで増加させていくことを明らかにした。

同社はタイでの生産を東南アジアと中東向けの輸出拠点として捉えていく方向ということだ。

タイの国別投資受け入れ
(100万バーツ) (件)
1.投資額 2.投資件数
国名 2000年 2001年 変化率(%) 国名 2000年 2001年 変化率(%)
日本 107,382 83,369 -22.4 日本 282 257 8.9
アメリカ 37,752 40,131 6.3 アメリカ 72 40 -44.4
マレーシア 6,095 27,895 357.7 マレーシア 43 29 -32.6
ドイツ 6,394 13,719 114.6 ドイツ 39 24 -38.5
香港 6,241 9,710 55.6 香港 31 20 -35.5
シンガポール 19,910 8,895 -54.9 シンガポール 64 51 -20.3
中国 367 8,690 2267.8 中国 8 12 50.0
台湾 17,632 6,824 -61.3 台湾 120 50 -58.3
その他 10,876 10,299 -5.3 その他 102 92 -9.8
合計 212,649 209,622 -1.4 合計 761 575 -24.4

出所:タイ国家投資委員会(BOI)

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