CPFの積立金運用を民間に委託

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

中央積立基金(CPF)の積立金運用が民間金融機関に委託する案が浮上している。タルマン・シャンムガラトナム上級国務相によれば、香港の強制退職年金基金(MPF)をモデルに検討を進めている。

CPFは労働者と企業が給料の一定割合(現在20%と16%)を拠出して証券などに投資し、老後に備える仕組みで、日本の厚生年金に相当するが、世代間や所得階層間で所得移転が発生する日本の厚生年金と違い、勘定はすべて加入者個人に帰属して、運用成績がそのまま老後の蓄えに跳ね返る。掛金は所定の割合で普通・医療・特別の3つの口座へ拠出される。

積立金の運用については、中央積立基金庁が他の管理業務と併せて一元的に行っており、主に国債に投資されている(注1)。このほかに、加入者本人の判断で中央積立基金庁が認定する投資に回すことも認められている(注2)

今回の新提案でモデルとされている香港のMPFでは、企業と従業員の双方が従業員月給の5%を拠出するが、これを運用するのは基金当局ではなく、民間の信託会社である。企業側がスキームを選択し、20余りの認可信託会社のうちいずれかに資金を預ける。

今回の提案が実現された場合、加入者は、希望する年金プランに応じて、政府の認可する銀行などの民間運用機関を選択し、毎月の掛金は、選択した運用機関の口座に直接拠出されることになる。

加入者の利益が現行制度よりも大きくなるかについては、今のところ見方が分かれているが、少なくとも運用会社にとっては朗報であることは間違いない。CPFの口座には運用されずに寝かせたままになっている積立金が615億ドルにも上っている。

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