連立政権、失業対策でコンビ・ローン導入決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

連邦雇用庁が2002年1月10日に発表した統計によると、2001年12月の全ドイツの失業者数は396万人で、心理的な大台と言われる400万人を辛うじて下回ったが、2002年1月に400万人を再び突破し、430万人に達すると専門家から予測されている。しかも、昨年12月に野党の首相候補に決まったエドモンド・シュトイバー・バイエルン州首相(キリスト教社会同盟CSU)が、経済・雇用政策を秋の連邦議会選挙の第1の争点にすると表明した。このような状況を踏まえて、総選挙の前に少しでも失業者数を減少させたいとの思惑も働き、シュレーダー連立政権は失業対策としてコンビ・ローンの導入を決定した。

コンビ・ローンとは、失業者を低賃金労働に従事させ、これを国家の補助金で助成するもので、前保守中道政権末期にも長期失業者対策として導入が検討されたが(本誌1998年10月号Ⅱ、11月号Ⅰ参照)、当時野党だった社会民主党(SPD)や労組は、賃金が補助金で助成される広範な領域が成立して納税者の負担になる等の理由で反対し、1998年秋の連邦議会選挙での政権交替で、この計画は頓挫した。

今回のコンビ・ローンは前政権の場合とは異なり、連立政権(SPD主導)が失業者数を減少させる目的で、ラインランド・ファルツ州のモデル(マインツ・モデル)を連邦規模で採用するもので、これによると、失業者で低賃金労働に新たに従事する者は、社会保険料支払いのための補助金を受け、77ユーロの育児手当の助成も受ける。低賃金の範囲は、独身者については月額325~897ユーロ、夫婦または単独で育児に従事する者については月額1707ユーロである。もっとも、連立政権を担う緑の党は、失業者に限らず、すべて低賃金労働に従事する者を助成すべきとの、より広範な多額の助成計画を主張してSPDと対立していたが、財政均衡を標榜する政府の負担が過大になるとの観点から、補助の範囲を失業者に限定するSPDの意見をシュレーダー首相は採用した。ただ、マインツ・モデルでは、社会保険料の補助金は社会扶助(本誌2001年7月Ⅰ参照)に算入されるため、社会扶助を受ける失業者でコンビ・ローンに参加するものが予想よりも少なかったので、連立政権は、失業者の就労意欲を高めるために、コンビ・ローンの補助金を受ける者は従来どおり社会扶助の全額支給をうけることにした。なお、従来のマインツ・モデルでは、コンビ・ローンを受ける大多数の者はパートタイマーとしてであり、主婦も多く、低賃金職種には、女性店員、理髪師、清掃人員、介護人員等がある。

リースター労相は、今回のコンビ・ローンの雇用創出効果を2万5000~3万人と見ており、失業対策として万全でないことを認めているが、従来コンビ・ローンに否定的だった労働総同盟(DGB)等労働側も、悪化する労働市場に鑑み、マインツ・モデルの導入を仕方がないものと支持を表明している。これに対して野党、なかんずくキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は、今回の政府案を小手先の失業対策だと厳しく批判している。

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