CPFの学資引出が急増
中央積立基金(CPF)の教育資金向け引出が急増している。2001年の利用者数は9月末時点ですでに前年比28.68%増加し、1万894件に達している。背景には、景気低迷が家計を圧迫しているほかに、昨年のCPFの制度変更で学資引出が容易になったことがある。
CPFは労働者と企業が給料の一定割合を拠出して証券などに投資し、老後に備える仕組みで、日本の厚生年金に相当するが、世代間や所得階層間で所得移転が発生する日本の厚生年金と違い、勘定はすべて加入者個人に帰属して、運用成績がそのまま老後の蓄えに跳ね返る。
CPFの勘定を教育資金に利用する制度は1989年に導入され、毎年約7000~8000人が利用してきた。これまで 同制度を利用するには、口座に最低6万5000ドルの預金残高が必要であったが、この条件が2001年6月1日に撤廃された(注1)。2001年の利用者数が9月末時点ですでに1万894件に達している背景には、この残高条件が撤廃され、低所得者層が利用しやすくなったことがある。
近年の利用者数を見ると、1995年の約7000人から2000年の約8500人へ、年平均310人ずつ増加していったが(平均増加率は約4%)、2001年は対前年比で2400人も増加し、増加率も28.68%と急上昇している(表参照)。
CPFの学資引出の利用者が急増しているほかの要因としては、長引く景気低迷で家計が圧迫されている面も大きいと、CPFは説明している。
利用者数 | 増加率(%) | |
1995 | 6,918 | - |
1996 | 7,413 | 7.16 |
1997 | 7,588 | 2.36 |
1998 | 8,016 | 5.64 |
1999 | 8,169 | 1.91 |
2000 | 8,466 | 3.64 |
2001.9.30 | 10,894 | 28.68 |
注
- ただし、利用限度額は、以前は6万5000ドルの最低預金額を除いた普通口座と特別口座合計の80%までだったが、2001年6月1日以降は住宅資金用の引出し額を除いた普通口座の40%までになった。なお、学資引出の条件緩和は、CPF投資制度の改正に合わせたものであった。2001年1月1日以降、CPF加入者は自己資金を投資するのに最低預金残高を維持する必要がなくなったが、学資引出についても同様の措置を求める声が大きくなっていた。(本文へ)
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