欧州委員会、保健医療制度等に関するコミュニケを公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

欧州委員会は、良質な保健医療サービスを提供し続けるためには制度の改革が必要であるとの欧州サミットの決定を受け、加盟各国等の保健医療制度と高齢者介護制度を調査・検討していた。そして2001年12月になって欧州委員会は、その分析結果と各国の制度が達成すべき3つの共通目標を提言したコミュニケを公表した。

その中で欧州委員会は、これらの制度が各国でかなり異なるものの共通の課題に直面しつつあることを指摘するとともに、改革を行う上で達成すべき共通の目標を提言している。同コミュニケは2002年春に開催される欧州サミットの場に送られる予定となっている。

課題

コミュニケは、まず各国が取り組まなければならない共通の問題を指摘している。

第1は、人口の高齢化である。欧州レベルでも高齢化が進み、それとともに保健医療分野における公的支出の増加が見込まれる。さらに伝統的な家族構成の崩壊により、家族間のネットワークが弱体化し、家族内での介護が困難になる可能性もある。その結果、長期介護を必要とする者が増加し、女性の雇用率が上昇すれば、高齢者に対する専門的な介護サービスを整備する必要が生じてくると思われる。

第2に技術の進歩が挙げられる。高齢化の進展とともに、この分野での技術開発がめざましく進んでいるが、同時にその費用が高まっている。限られた財源の下で、透明で効果的な評価体制の開発が求められている。

第3は、人々が医療・介護サービスの消費者として新たな要望を持つようになっていることである。つまり介護サービスの成果や質に関する透明性に対する要望が高まっているのである。

共通の目標

欧州委員会は以上のような課題に取り組むために、同時並行的に達成すべき3つの長期的な目標を示している。

第1に、保健医療制度と高齢者介護制度を利用する権利を万人に保障することである。第2に、様々な介護や医療の組み合わせにより良質な保健医療サービスを提供することである。そして第3に、財政的に維持可能な制度を作ることである。医療費上昇はどこの国でも共通の問題であり、短期的には解決が難しくなっている。そこで、コミュニケは加盟各国の経験を交換するよう求めている。

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