所得格差解消せず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

歴代政府は就任時の公約の中に必ず所得配分の改善を優先政策として掲げるが、公式指数は所得配分が年々悪化していることを証明している。ブラジル地理統計資料院のセルジオ・ベッセルマン総裁はブラジルの3大問題として、所得配分の不均衡、教育レベルの低さ、上下水道の不備など基礎衛生の不足を指摘し、所得不均衡を最大の問題との考えを示している。

資料院が12月に発表した指数は1992年と1999年のデータの比較で、1992年に国民の40%に当る貧困層の1人当たりの収入は50.54レアルであったものが、99年は68.32レアルへ増加しただけであるが、国民の10%に当る裕福層は同期に1,053.09レアルを1,511.67レアルへ引き上げており、上下の格差は一段と広がった。最低給料の倍数で計算すると、92年に40%の貧困層は1人当たり最低給料の0.37倍の所得であったものを99年は0.50倍にしたが、10%の裕福層は7.74倍を11.12倍に増加させた。貧困層の所得に対して裕福層は92年の20.84倍を99年は22.13倍にしている。国民の10%の裕福層は40%の貧困層の22倍以上の所得となっている現状が、国家の経済開発と発展の障害と悪循環を招いていると指摘されながら、所得配分の悪化を逆転させることも出来ない。

15歳以上の文盲は91年の20.07%(1,923万3,758人)から2000年は13.63%(1,629万4,889人)へ低下した。義務教育の普及度合いを分析するために、10歳以上の文盲を調査した所、1980年の25.5%は91年に19.7%へ、2000年は12.8%へ下がった。現代社会に於て経済活動に必要な基礎知識を持たない15歳以上の実用的文盲(初等科4年以下の学歴)は、92年に36.9%であったものが、99年には29.4%に下がって、教育努力の成果が少し出ている。しかし資料院では実用的文盲率の29.4%は現代社会に於ては、警告的水準だと評価した。ただ年齢別人口は変動が続いていて、99年に女性1人当たりの平均子供所有数は2.2人に下がり、子供の出生数減少とともに15~50歳と60歳以上の人口比率が多くなり、老齢化が進んでいる。この傾向は次の10年間も続くと予想している。総裁は所得不均衡、国民の学歴の低さ、基礎衛生部門の不備と言う3大問題を指摘したあと、14歳以下の人口減少、15歳以上の人口比率増加は働く人口に対する扶養負担を軽減して、経済発展を有利にすると評価した。しかしブラジルは人数からすると世界有数の高齢者を抱えており、早急に社会保障制度の再建を必要とすると総裁は指摘した。人口増加率の減少はまだブラジルに取っては有利な条件となる水準にある。子供を2~3人産んだ女性の50%は家族計画を採用して産児制限を実施している。

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