労使の直接交渉開始

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

総合労働法の一部を柔軟化して、労使交渉の同意を法令以上に効果あるものとする政府の労働法改正案は下院を通過して上院表決を待っているが、労働党系の中央労組CUTは上院表決を全力を挙げて阻止すると発表している。

これに対し対立労組であるフォルサ・シンジカルは2002年の国会開会と同時に改正法が成立する仮定のもとに、法成立前に、金属労組と自動車部品工業との間に直接交渉を開始し、政府案による交渉成立第一号を目指している。交渉を進めている労組によると、現行法は企業の財政状態を考慮せず、一律に義務を課しているため、財政的に困難となった企業では解雇を選ぶしか道はなくなっている所があり、解雇を回避することが、交渉の目的となっていると説明している。

部品工業は全国で700社、20万人を雇用しており、労組側の発表ではすでに企業の35%は同意を成立させて、法案の成立を待っている。改正と言う名称になっているが、労働者の既得権は何等変更なく維持され、単に年末ボーナス、休暇、産休、集団休暇などの支払いや実施方法について、労使交渉を認めて柔軟性を持たせるだけであり、企業家団体が「微々たる改正」と評価している。

政府としてはタブー視されている労働法改正に、まず何等かの糸口を見つける手段として、何としても改正案を成立させたいと政治的根回しを行っている。現行総合労働法は労使を法令で拘束して、政府のコントロール下に置くことを目的とした国際グローバル化以前の、ブラジルが貿易に鎖国政策を取っていた時代に制定されたものであり、時代に合わなくなった結果、労使ともに法の規制を逃れようと、非正規雇用を増加させ、現在では給料生活者のうち、正規雇用は50%以下に下がり、総合労働法の維持に固執すれば、社会保障制度の破綻を招き兼ねない事態となっている。

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