「パートタイム産休」の導入

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

政府は11月16日に行われた閣議で、出産及び妊娠中のリスクに対する社会保障給付に関する勅令(Real Decreto、政令にあたる)を承認した。スペインでは1999年に「家庭生活と労働の両立法」が制定されたが、これに基づく「家族支援統合プラン」が11月8日に承認された。今回の勅令は、同プランの具体的な展開措置として、初めてとられたものである。

ここで簡単にスペインにおける出産・妊娠中のリスクへの給付制度を説明しておく。

まず「出産」という言葉であるが、これは文字通り出産ととるより「親になること」と解釈した方がよい。というのは、実際には出産だけでなく養子をとるような場合も含まれるからである。出産・養子いずれの場合も、社会保障制度からの給付を受けて休暇をとれる期間は16週間とされる。両親共働きの場合は母親だけでなく父親がとることもできる(両親が同時に休暇をとっても、母親のあとに父親が続けて休暇をとってもかまわない)。産休の配分は労働者自身が決められるが、出産直後の6週間は、母体の回復期間として必ず入っていなければならない。養子の場合は、養子縁組みを認める行政決定あるいは司法決定の期日から休暇の権利が発生するとされる。

妊娠中のリスクに対する給付とは、妊娠中の女性労働者が、自分自身あるいは胎児の健康上の理由から他の職場に異動すべきであるにもかかわらず、職場異動が技術的に困難であると判断され、労働そのものを中断しなければならない場合に支給される。

今回承認された勅令は、こうした給付制度の枠をさらに拡大し、また柔軟化しようというものである。最も注目されるのは、事前に労働者と使用者との間で合意が成立すれば、出産・養子の場合の16週間の休暇をパートタイム労働と両立させながらとることができるとした点である。つまり、産後の母体回復期間とされる6週間を除いて、残り10週間を全面的に休暇とするのでなく、例えば半日労働を20週間行う形にすることができる(養子の場合は、当然ながら産後6週間の制限はない)。この間、社会保障制度からの給付を引き続き受けることができるが、給付額は休暇をとっている半日分に応じて半額となる。パートタイム期間が終了した時点で、労働者は再び以前の労働時間に戻ることになる。なお、これは父親、母親のいずれに対しても認められる。

女性労働者が産休中の社会保障給付を受けるためには、出産直前の5年間における社会保障制度への拠出期間が少なくとも180日間でなければならないとされている。この点に関して、今回承認された勅令は、母親が拠出期間が180日に達しないため受給資格を有しない場合には、かわって父親が全額支給を受けられるものとしている。

また、未熟児出産などで産後も乳児の入院が必要な場合、入院期間を過ぎた後から給付を開始することが親側の要求であったが、勅令はこの点もとりいれたものとなっている。

さらに、多胎出産の場合は産後6週間に対する給付額が子供の数に応じて増やされるが、今回の勅令により2人以上の子供を同時に養子としてとった場合にも同じ扱いがされることになった。

一方、妊娠中のリスクに対する給付の対象を、賃金労働者だけでなく自営労働者及び社会保障制度の「家事労働者特別制度」加入者にも広げることが決定されている。

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