連立政権、失業者数と年金保険料の公約達成を断念

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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連邦議会選挙の年の2002年を目前にした2001年11月、シュレーダー連立政権の失業者数と年金保険料率に関する2つの公約の達成が断念されるに至り、野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は、公約違反を総選挙の争点として厳しく追及していくことを表明した。

2つの公約については、まず11月中旬に、シュレーダー首相が、総選挙までに失業者数を350万人以下に減らすとしていたかねてからの公約の達成を断念し、さらに11月下旬に至り、リースター労相が、年金改革法(本誌200年12月号I、2001年4月号I、8月号III参照)による保険料率の引き下げが達成できないことを認めた。

失業者数については、経済賢人会議も11月の政府に対する答申で、2002年の失業者数(年間平均)は396万人と予測し、労働総同盟(DGB)も400万人を変える可能性を指摘していたが、シュレーダー首相は、アフガニスタンへの連邦軍派遣をめぐる11月の内閣信任投票決議で信任を得た直後と同月後半の社会民主党(SPD)大会に際して、従来の楽観的な見方を改め、世界的な景気減速の煽りを受けて公約の350万人の数値目標達成が困難になったことを正式に認めた。世界的景気低迷に米国同時多発テロの追い討ちがあり、野党を初めとして、各方面から350万人の公約達成が不可能であることは、以前から主張されていたが、同首相が公約達成の断念を公式に認めたのは初めてであり、波紋を呼んだ。

つづいて、リースター労相が2001年度の年金報告を提出し、その中で連立政権の目玉の一つである年金改革法で予定された保険料率の引き下げを達成できず、保険料率は2001年5月に出された政府予測19.0%をも上回り、2001年度は19.1%になると主張し、閣議でもこれが了承された。

年金保険料率の引き下げについては、労働市場の活性化措置とも関連して、連立政権内部でもSPDと緑の党の間で意見の対立があった。緑の党の社会問題専門家テア・デュカート氏は、雇用の確保のためにも社会保険料の支払いを安定化させ、可能な限り減額させねばならいとし、そのために特に年金保険の保険料率を2002年以降0.1ポイント下げて19.0%にせねばならないと主張していた。同氏は、そのために準備金を国庫支出額1カ月分(約280億マルク)から0.75カ月分に取り崩す必要があるとし、それによって保険料率19.0%の維持が可能になるとした。

これに対して、リースター労相は、政権が維持する緊縮財政との関連でも(本誌2002年1月号第1記事参照)この緑の党の要求を拒否し、準備金を国庫支出額0.8カ月分として法廷の範囲を維持し、これにより準備金の取り崩しを従来の枠内に止め、この結果、年金保険料率については5月の政府予測を上方修正することになった。

閣議で了承されたリースター案では、法廷の準備金額が変更されない限り、2002年のみならず、少なくとも2005年までは保険料率は19.1%、2003年18.7%、2005年18.6%)を大きく修正することを余儀なくされる。

さらに、リースター案では、疾病保険の保険料率は2002年度は平均13.9%引き上げとなり、これは5月の政府 予測を0.4ポイント上回ることになり、その他も含めた社会保険料全体では、保険料率は41.2%となり、連立政権発足時の公約40%を上回ることになる。この結果、使用者と雇用者の双方が、連立政権の公約額よりも約100億マルクの追加的な負担を強いられることになる。

失業者数についての公約違反につづく、このような年金保険を中心とする保険料率についての公約違反よって、連邦議会選挙を前にした野党、なかんずく最大野党CDU・CSUがさらに勢いづくことになった。フリードリヒ・メルツCDU連邦議会院内総務は、この事態を受けて、攻撃の矛先をシュレーダー首相に向け、同首相は就任時からの公約を果たせなくなり、連立政権の雇用・社会保障政策は失敗に帰したのであり、今後CDUは予算審議においてのみならず、2002年秋の連邦議会選挙の中心的な争点として、政治的にも連立政権の執政を追及していくとしている。

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