シュモルト化学労組委員長、DGB会長の輪番制を提唱

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

労使交渉等で現実的な柔軟路線を取ることで、ややもすると強硬路線を取りがちなIGメタルと対比される鉱山・化学・エネルギー労組(IG BCE)のシュモルト委員長が、労働総同盟(DGB)の会長を従来の選挙制によるのではなく、輪番制によって決定することを新たに提唱し、労働界でも波紋を呼んでいる。

シュモルト委員長は、2001年11月23日のフランクフルトの組合大会で、97.3%の圧倒的な支持で委員長に再選され、87万人の組合員を擁するドイツ第三の規模の労組をさらに4年間率いることになったが、同委員長は、現在進んでいるDGBの改革において、その傘下の産別労組をより緊密に結び付けるためには、有力労組から会長が選挙で選出される現在の方式は廃止されねばならないと述べた。同委員長は、その代わりに交番性によって、各産別労組の委員長が交替でDGBを率いるべきで、そうすれば傘下の産別労組もそれだけ強い責任を担い、結び付きも強められると述べている。

DGBの組織構造は1948年以来存在するので、シュモルト委員長も来年のDGB大会ですぐに会長の輪番制が実現するとは想定しておらず、また、ナショナルセンターのもとでの自主的な産別労組の集まりという組織構造は維持されるべきだとしている。また、同委員長は、現在のシュルテ会長の職務執行を称え、同会長に反対しているのではないことも述べている。

このようなシュモルト委員長の提言は、他の産別労組に戸惑いを生じさせている。

ツビッケルIGメタル委員長は慎重に距離をおき、DGBのトップの構造をどうするかは今後の課題だが、従来は選挙制の会長職でうまく機能してきたと述べている。これに対してIGメタル内部の非公式な見解としては、DGBに各産別労組の長から独立した会長職をおかないと、政治家は将来立法の提案においてDGBを素通りして、直接各産別労組の長に持ちかけることになり、DGBの政治的交渉における立場が弱まるとして、シュモルト提言を疑問視する意見も唱えられている。

DGB自体も、シュモルト提案に対して、労組の力を高める提言には賛成だが、あらゆる変更には傘下の産別労組の多数による支持が必要だとして、同提案とのあからさまな対決は回避している。だがDGBは、従来から守られてきた役割分担は維持されるべきだとしており、DGBが政界と経済界との政治的、社会的対話に権限をもち、各産別労組が企業(事業所)における組合員の利益代表と賃金政策に権限をもつべきで、これは変わるべきではないとしている。

いずれにしても、DGBの将来の改革の中で、労働界の有力者シュモルト氏の提言だけに、今後の帰趨が注目される。

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