医療保険および年金を巡り2社でスト

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年1月

ヘンリー・J・カイザー・ファミリー財団が全国2734社を対象に、企業が提供している医療保険について調べた調査によると、企業が提供している医療保険料の平均コストが、2000年春から2001年春にかけて11%増加した。これは1992年以来最大の上昇率である。平均コストは、3人から9人の従業員を雇用している最小規模の企業では上昇率が最も高く17%、200人以上を雇用する最大規模の企業では10%であった。また同調査によると、医療保険を従業員に提供している使用者は過去2年間とほとんど変わらず67%であった。

多くの使用者は、処方箋薬のコスト上昇を問題視しており、44%の使用者が医療保険料の従業員負担分をおそらく引き上げるだろうと答えている。2001年には、従業員は平均で月30ドルの保険料を負担したが、これは2000年に比べ2ドル増加した。医療保険費が増加する中で、医療保険を巡り2社でストが起きている。

キャンベル・スープ社

キャンベル・スープ社のテキサス州パリス工場では、4年半の新協約をめぐり、同社と国際食品・商業労働組合(UFCW)との間で行われていた労使交渉が膠着状態に陥り、同社はストをしている従業員に代えて新従業員を採用し始めている。交渉に当たっているUFCWのローカル540は同社の提案に満足せず、何カ月にも及んだ交渉の末、2001年10月4日以来、1200人の従業員の大部分がストに参加している。1968年の操業開始以来、同工場でストが起きたのは初めてである。

従業員は10月7日に無条件で職場に戻る意志があると同社に伝えたが、その前に労使間に何らかの合意が必要であるとして、同社はこれを拒否し、工場の周囲にバリケードを置いて、少人数の非労働組合員が通常よりも少量の生産を行っている。10月11日の時点で労組との再交渉の予定はない。

従業員が負担する医療保険料の増額に加え、企業年金を転職後の会社へ持ち運びやすくする(年金のポータビリティ化)一方で、年金受給権の計算方式を年長の長期勤続者に不利なキャッシュバランス・プランに改めようとしている同社に、労組は抵抗している。

同社は1999年に一部の工場で従業員の年金を伝統的な確定給付型年金からキャッシュバランス・プランに切り替えた。現在では同社の企業年金受給権を持つ従業員の83%がキャッシュバランス・プランの対象となっている。同社は、キャッシュバランス・プランで長期勤続者が不利になることはないとしている。しかし、UFCWスポークスマンのグレッグ・デニアー氏は、確定給付型年金を維持した協約を2001年2月に締結したオハイオ州の工場の方が望ましい成果を上げていると反論している。

ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ社

米国がアフガニスタンへの攻撃を開始して1週間後、タリバンとの戦闘に使われる戦車などを設計、製造しているゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ社のミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州の3工場で働く、全米自動車労組(UAW)の組合員800人以上がストに入った。

同社スポークスマンによると協約合意できずに交渉期限を過ぎた。従業員によると、医療保険と企業年金を巡りストが起きた。同社で設計を担当している従業員は、引退後に医療保険に加入しようとしても保険会社が50歳ないし60歳の者は加入させてくれないと話している。UAWによると、同社は以前、従業員に引退後の医療保険給付を与えていたが、その後の協約では与えないようになっていた。同社は、1980年代、90年代を通じ人員削減を繰り返していたが、2001年になって40億ドル以上の契約を得たほか、9月に戦車の装備改善のための3040万ドルの契約を得るなど業績が改善している。同社の機械工によると、ストをするタイミングは良くないものの、UAWのローカル12(ミシガン州)ではストに反対したのは1人だけだった。

2002年1月 アメリカの記事一覧

関連情報