経済状態悪化後、空港技術者らが協約交渉開始

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

440万人の労働力人口のうち約7万人の従業員は、いまだに労働協約を結んでいない。7—8月の夏休み期間に交渉が中断されたり、夏になった時点で交渉が始まってもいなかったからである。これらの労働者が、2000年末から2001年に結ばれた他の産業部門の労働協約同様の賃上げを獲得するのは困難であろう。なぜなら、経済状態の深刻な悪化により、製造業を中心として大量の解雇予告が出されているからである。

現在交渉を始めようとしている労働者グループには、郵便労働者4万1000人、スカンジナビア航空その他の航空会社の従業員9000人、繊維・衣料産業労働者7000人、ジャーナリスト7000人が含まれている。これらの従業員を対象とする協約のほとんどが、今秋期限が切れる。ジャーナリストの協約は、夏前に期限が切れた。

大規模な工業部門の協約が2000年12月から2001年3月にかけて交渉された時点では、4%の経済成長が予想されていた。それらの協約は3年間にわたって、平均3%の年間賃上げを取り決めていた。景気は短期間の変動があっても、すぐに盛り返すと予想されていた。経済活動についてはV字形回復が見込まれたが、実際はU字形となり、今ではL字形となっており、ほとんどのエコノミストが、不況はいつ終わるか分からないとしている。

一方、政府の予想は、予測可能な近い将来のGDP成長率を年1.5%と見積もっている。工業部門の雇用は減少しており、公共部門の雇用で埋め合わされてはいるものの、それもどの位続くかわからない。インフレ懸念もある。こうした全ての条件が団体交渉を困難にするだろう。

最初に交渉のテーブルに着いたのは、ブルーカラー運輸労組が組織する空港の技術労働者500人であった。2001年初め、パイロット労組が16%賃上げを獲得し2年協約を締結したため、空港の技術労働者も同率の賃上げを望んだ。全国調停機関が関与し、同機関は「望ましい賃金決定システム」に貢献するという使命を果たすために、通常の年3%賃上げの線に沿った協約締結を促すものと見られていた。ところが運輸労組の意に反して任命された調停者は、夏前に諸労組が署名した年3%賃金を受け入れるよう、運輸労組を説得する努力さえしなかった。その結果、同労組は旧協約終了時点で、超過勤務の中止と新規従業員の採用中止を発表した。しかし、この労使対立の後、徹夜に及ぶ長い交渉が行われ、調停者の仲介を経ずに1年協約が締結された。労働者は、4%の賃上げと夜間などの勤務時間に対する手当の30%増額を勝ち取り、使用者にとっては合計で約8%のコスト増となった。この運輸労働者の協約は、スウェーデンの賃金決定システムが、多くの部門で横並びの賃上げ率を示しながらも、小さい集団が年約3%の標準からはずれる余地を残していることを例証している。

運輸労組は、今後交渉を行う2500人の機械工に同様の協約締結を期待している。また、航空部門で客室・事務スタッフ、搭乗手続担当を始めとする6000人のホワイトカラー組合員を擁する商業俸給労働者組合(HTF)は、運輸労組が合意に達した後に交渉を開始する予定である。

これらの交渉と協約には多くの関心が集まっている。新しい全国調停機関は、両当事者に対してその意向を押し付ける正式な権限を持つが、その権限の行使には消極的であり、結局のところ、労使は調停者抜きで合意に達した。似たような状況は建築・建設産業でも生じている。そこでは全国調停機関が冷却期間の発動を差し控え、調停者の更なる介入なしで、当事者たちが、短期間の対立が表面化した後、自主的に合意に達したのである。

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