短期雇用契約の増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

ブルーカラーの労組連合であるLO(スウェーデン労働組合総同盟)が、労働力調査AKUを実施しているスウェーデン統計局の協力を得て行った研究によれば、短期雇用契約の数は、1990年代に1.5倍弱に増えた。現在、440万人の労働力人口のうち、52万7000人の従業員がこの不安定な雇用関係に置かれており、その数は1990年の労働力人口の9%にあたる37万8000人から14%以上へと増加している。

女性に多い臨時雇用

試用期間のような臨時雇用は、通常6カ月間であるが、たいてい正規雇用につながるので、社会的に受け入れられ、労働組合によって望ましいとさえみなされている。それ以外の臨時雇用の形態は、望ましくない。試用期間中の10人に7人は、短期間で正規雇用に至っているが、その他の臨時雇用では、10人のうち3人しか正規雇用にならない。不安定な雇用は、主に若年者にとって大きな社会問題であり、彼らは家族や子どもを持とうとしなくなっている。臨時労働者は、24歳から30歳の女性に最も多いが、これはスウェーデンでは伝統的に結婚する年齢である。

とりわけ、「需要に応じて呼び出される」労働者は、1990年の4万人から現在の12万人へと大きく増加した。この増加は、正規従業員の数が、1990年の364万2000人から、2001年第1四半期の322万1000人まで減少したのと同じ時期に生じている。

LOのハカン・マイアー副委員長は、この結果は、臨時雇用は一般的に正規雇用に至るとする使用者並びに労働市場当局の見方と相容れないものだと語った。この調査は、臨時労働者が、臨時雇用から脱出できない傾向を示している。不安定な雇用に陥るのは主に女性であり、とりわけ北欧以外の出身の女性である。スウェーデンにおいてこの範疇の従業員の50%以上は、不安定な臨時の職についている。スウェーデンは、欧州の平均である13%よりもさらに高い臨時雇用率を有し、さらに徐々に増加傾向にあるが、デンマークでは、正規雇用が増えるプラスの変化が見られる。

臨時の、需要に応じた雇用が増加したのは主に中小企業においてである。しかし、プロジェクトごとの雇用も大企業において増加し、正規雇用の減少をもたらしている。しかし、1999年から2000年にかけての経済の改善とともに、試用的雇用は増加したのに対して、プロジェクトごとの雇用は減少した。

LOの調査はまた、ブルーカラー、ホワイトカラーおよび専門職労働組合の組合員の間で雇用形態が如何に異なるかも示している。ホテルおよびレストラン、小売および地方自治体で働くLO組合員(ブルーカラー)が、最も不安定な条件の下にある。ホワイトカラー労組の中では、とりわけ教員と事務労働者が、正規雇用でなく臨時雇用の増加を容認せざるを得なかった。

LOによれば、不安定な臨時雇用の増加は、低い不安定な収入を意味するだけではない。それはまた、住居のための長期賃貸契約を結ぶことができなくなるとか、銀行は正規雇用労働者でなければ金を貸さないといった社会的困難をもたらす。正規雇用労働者でないと、電話の加入すら難しいかもしれない。ある自治体では、正規雇用労働者であることが、公共の育児施設に子どもを入れてもらう条件になっている。育児休暇、休暇手当、あるいは失業保険の受給資格を得るためには、相当期間働いていなければならない。女性は、失業を恐れて妊娠しようとしない。スウェーデンの出生率は、かつて欧州一高かったが、これまでにない程低くなっている。

臨時雇用は、中小企業と資格を持たない労働者の間で最も一般的である。北欧以外で生まれた女性は、クリーニング、ホテル、およびレストランで、主に臨時の職業を見つけている。そうした女性たちが、IT部門や教育程度の高い、あるいは熟練労働者を必要とする職業に従事することは珍しい。LOの法律専門家によれば、中小企業が正規雇用労働者を雇いたがらない理由は、企業主が雇用保障法を知らないことにあるとされる。LASという法律によって規定されている雇用保障が、諸悪の根源だとする使用者団体のプロパガンダを彼らはずっと注ぎ込まれてきたのである。実際はそうではない。いかなる使用者も、仕事がなければ、その従業員を雇っておく義務はないのである。

LOは、臨時雇用が、実際に正規雇用への架け橋となるよう、雇用保障法を改善するための要求を準備している。

労働条件向上への提案

労働生活研究所(NIWL)並びにフィンランド商科大学のニクラス・ブルウン教授は、雇用保障法改革についてスウェーデン政府の委任(委託)を受けているが、臨時従業員の労働条件を向上させる、次の二つの選択肢を提示している。

  1. 臨時雇用で労働者を雇う使用者の権利を最小限にするよう、より厳格な規制を導入する。
  2. 臨時従業員が増えることを容認する代わりに、彼らにも正規雇用の従業員と同じ労働および社会的権利を法律で付与する。

労働組合と労働裁判所はともに、法的には本来正当でない領域でも、臨時雇用が実施されている現状を容認しているようにみえる。そのため、ブルウン教授は、臨時従業員は正規従業員に空きが出た場合の採用において優先権が与えられ、正規従業員と同一の能力開発を利用でき、同一の社会的権利および銀行での借入れを受ける権利を持てるようにすべきだと提案する。ブルウン教授は、長い間臨時雇用を望ましからざるものとみなし、その全精力を正規従業員に集中してきた労働組合に対しても批判的である。教授は、臨時雇用を制限する立法は、人材派遣企業を繁盛させ、外注と自営業者が増えるだけで、労働組合の利益にはならないだろうと考えている。

雇用条件別従業員数(各年の第1四半期、単位千人)
1990年 1994年 1997年 2001年
女性      
正規雇用フルタイム 1061 922 958 1080
正規雇用パートタイム 712 618 528 497
臨時雇用フルタイム 116 100 110 149
臨時雇用パートタイム 128 123 156 162
女性全体 2017 1763 1752 1888
男性        
正規雇用フルタイム 1758 1382 1416 1540
正規雇用パートタイム 111 110 97 104
臨時雇用フルタイム 95 108 114 141
臨時雇用パートタイム 39 49 56 75
男性全体 2003 1649 1683 1860
出所:AKU2001年;LO2001年8月

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