解雇者救済スキーム、導入へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

ラティフ・アハマド人的資源副大臣は10月3日、退職金を支払われずに解雇された労働者を救済するためのスキームを法制化するため、その仕組みについて検討中であることを明らかにした。実現すれば、マレーシアで初めての国による失業者救済制度となる。

MTUCが「解雇者救済基金」として提案

検討中の解雇者救済スキームは、もともと1997年のアジア経済危機の影響で15万人以上が解雇されたのを機に、マレーシア労働組合会議(MTUC)が「解雇者救済基金」として提案したもの。基金を支える掛金として毎月、労働者が1リンギ、使用者が従業員1人につき1リンギを拠出し、基金の管理は社会保障機構(Socso)があたるとしていた。

これまでの使用者と政府の反応

使用者は当初から反対の立場を貫いてきた。理由としてコスト増加のほかに、多くの使用者は解雇する際に手当を支給しており、一部の悪徳使用者の負担を背負わされるのは筋違いだと主張してきた。政府は、検討の末一度は却下したものの(1998年末)、景気回復が鮮明になった2000年のメーデーでマハティール首相が、使用者が同意すれば政府は基金設立に前向きであると方針転換を表明、人的資源省が政労使の三者会議を立ち上げ検討していた(ここまでの経緯について詳しくは本誌98年9、10、12月号、99年2月号参照)。

2001年3月の三者会議で人的資源省は、使用者に受け入れられやすいように、掛金を労使双方とも労働者の月給の0.15%とする修正案を提示。使用者団体は同修正案も受け入れなかったが(本誌2001年9月号参照)、さらに協議を続けた結果、Socsoを通じて補償することに同意するに至った。

現在の検討状況

アハマド副大臣によれば、現在、解雇者救済スキームの仕組みについて検討を進めており、Socsoによって管理される基金を設立するか、あるいはSocsoの提供する補償制度の一つに加えるか、そのいずれかになる見通しである。

12万人が失業の恐れ

アハマド副大臣が今回解雇者救済スキームについて明らかにした前日、MTUCのランパック委員長は、同スキームを早急に導入させるよう政府に要請していた。米経済の減速が同時多発テロの影響でさらに深刻化するのを懸念したためだ。MTUCは、経済が今ほど悪化していない今年前半ですでに離職者は3万人おり、年末にかけてさらに9万人(とくにエレクトロニクス、輸送部門)が職を失う可能性があるとの見方を示している。

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