米国の同時多発テロ、インドソフトウェアー産業に衝撃を与える

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

同時多発テロに起因する米国経済の後退が、インドのIT産業に様々な影響を与え始めている。

悪影響

ソフトウェアー業界関係者は、2001年度のソフトウェアーの輸出額の予測を下方修正し、前年比20%増加の75億ドルになるのではないかと見ている。これは、2000年度のソフトウェアーの輸出の61%を占めていた米国の経済が、同時多発テロの影響を受け大きく後退しているためである。

インドの代表的なソフトウェアー企業のウィピロ社、インフォィシーテクノロジー社、サタヤンコンピューターサービス社は、同時多発テロの影響で契約が解約された事実はないと発表し、また、インフォィシーテクノロジー社は、第2四半期の業績を上方修正している。しかし、市場関係者は、米国の企業からの今後注文が減少し、各社は受注競争せざる得ず、その結果、ソフトウェアー作成価格が5から7%低下することが予想され、各ソフトウェアー会社の利益率は鈍化すると予想している。

また、国際的な各コンサルタント会社の輸出増加率に関する予測を見てみると、ボストン・コンサルタントグループ社は15%から20%、インターナショナルデータコーポレーション社が25%、アーサーアンダーセン社が25%から30%になると発表している。

一方、全国ソフトウェアーサービス企業協会(NASCCOM)は、2001年度当初、今年度のソフトウェアーの輸出目標を前年の62億ドルから40%増加の85億ドルとしていたが、現在までこの目標額を変更していない。NASCCOMは、米国の同時多発テロの影響は認めながらも、ヨーロッパでの需要が増加しており、全体ではそれほど輸出額は減少しないと予測している。

好影響

米国のIT不況と同時多発テロは、インドのIT産業に好影響を与える面もある、という見方も出始めている。

インドのIT業界は、米国の企業が「low cost-high quality」の経営方針を実施し、人件費の削減を計画している中で、インドで現地法人の設置あるいはインドの企業へのアウトソーシングにより作業の一部を行う動きが以前より増加するのではないかと見ている。

これにより、国内のIT技術者はもとより、米国で解雇されたIT技術者が、国内で再雇用されることも予想される。米国企業はインドでの操業を拡張傾向にあり、IT部門で今年新規に5万人の雇用の増加があるという予測もでている。

最近の米国IT関連企業のインドでの事業展開状況を見てみると、ソフトウェアー関連会社のバルシタ社は、米国の雇用を15%削減したにもかかわらず、インドで開発センターを設置した。通信関連のソフトウェアー会社のヴェリゾーン社は、開発事務所をチェンナイに設置し、100人のソフトウェアー関連の技術者を募集した。ヒューレッドパッカード社は、数千人の雇用を伴う新規事業を検討中である。

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