EEOC、モルガン・スタンレー社を雇用における性差別で提訴

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

法人株式部門の営業担当として最も高い給与(年収約100万ドル)を得ていた40歳の元女性管理職が、同部門約100名の女性とともに、昇進と給与面で性差別を受けたとしてモルガン・スタンレー社をニューヨーク連邦裁に提訴した。EEOC(雇用機会均等委員会)は、この集団代表訴訟原告に加わり、EEOCが大手証券会社を性差別で訴えた最初の重要な訴訟となった。金融業界で専門知識を活かして働く女性は増加傾向にあるが、EEOCによると、証券会社では伝統的に多くの雇用差別が行われており、社名を特定しなかったものの他の大手証券会社における性差別にもEEOCは関心を持っている、としている。

同様の業績評価を受けた男性と比較して、昇進、給与面で差別されたとするアリソン・シーフェリン氏は、EEOCに申し立てを行った後、法人株式部門で顧客に有益な情報も与えられずにいたほか、2000年末に「報復」として同社に解雇されたと主張している。EEOCは、この報復としての解雇についても訴えており、同社の雇用政策によって影響を受けた原告女性たちに過去の賃金、報酬を遡及して支払うよう求めている。

モルガン・スタンレー社のスポークスウーマンは、シーフェリン氏が差別にあったとするEEOCの主張を否定し、同氏が女性であるために昇進できなかったと主張している役職には別の女性が昇進しており、性差別との主張はあたらないとする。また、解雇についても、シーフェリン氏が、その女性上司を罵倒したためであると述べている。これに対し、シーフェリン氏は、証券市場ではそのような口論は日常的なものに過ぎず、解雇に結びつくものではないと反論している。

1986年入社、現在失業中のシーフェリン氏によると、少なくとも1996年以来、複数の同社女性管理職が、女性が上級経営者に昇進できないという不満を経営陣に伝えていた。また、シーフェリン氏は、労働条件や女性が除外されているゴルフなどの行事を改めるように求めていた。

金融業界は雇用差別に敏感になりつつあるが、EEOCによる訴訟は、大手証券会社の女性の採用・昇進政策に大きな影響を与える可能性がある。EEOCのカリ・ドミンゲス議長によれば、高給を得ていたシーフェリン氏と異なり、大手証券会社に勤務する大部分の女性は、金融街での仕事を生涯失うことを恐れ、性差別について不満を述べることをためらっている。

EEOC、地域事務所から本部への権限委譲を促進

EEOCのカリ・ドミンゲス新議長は、EEOCが提訴する雇用差別訴訟件数を削減するために地域事務所から本部への権限委譲を進めるとともに、訴訟よりも、差別的な職場環境の是正、教育、紛争の早期解決などの雇用差別予防措置や調停などに力点を移す方針を明らかにした。これは、クリントン政権下のEEOCが多くの雇用差別訴訟を行い、各地域事務所が異なった基準で提訴しているとの産業界の批判に応えるものである。EEOCはまた、EEOCの委員あるいは事務総長が、地域事務所が提訴しようとしている案件について、提訴の妥当性を検討することを義務づけることも検討している。クリントン政権以前には、こうした検討が行われていた。

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