タイ航空、パイロットの賃上げスト

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

2001年8月下旬より、タイ航空のパイロットが組合執行部と賃上げ要求を巡って対立している。同社のパイロットは客室乗務員でもある組合幹部との同乗を拒否し、フライトスケジュールが大幅に乱れる事態となった。

同社パイロットの代表は今年5月以降、他社と比較して給与の水準が低いことから、それを国際的な水準にまで引き上げるよう経営側に要求していた。しかし組合側は、企業がコスト削減にさらされている時期にパイロットだけ給与を引き上げることは、その他のスタッフとの間に不公平が生じ不適当だと判断し、その動きに反対をしていた。

その後、「賃上げを要求する前に、パイロットの効率性を見直すべき」との発言をしたジャエムスリ組合議長に対し、およそ400人のパイロットから、組合議長の陳謝を求める抗議が殺到した。陳謝がなければ、組合議長が客室乗務員として乗る予定の飛行機では一切操縦を行わないと宣言、上記のようなストライキとなった。タイ航空のパイロットは約900人で、そのうち、組合幹部との乗り合わせを拒否しているパイロットは約300人にも上った。

ピシット同社社長は、「パイロットには、不快だと思ったときに操縦しない権利があり、それはパイロット以外には理解できない」と語っている。

その後8月28日に、組合との対立は解決したとの経営側からの発表があったが、現実には解決しておらず、表面的に問題を繕う形での発表であったようだ。

タクシン首相はこの事態を重く見て、タイ航空は国の「顔」であり、事態の解決は緊急課題であると述べ、パイロットらにストの中止を要請した。

ワン・ムハマド運輸通信大臣は、「タイ航空のスタッフには、自分自身の利益を考える前に、国の利益を考えて欲しい」と促し、タイ航空の国営企業としてのイメージを損なった場合、その回復が難しいとの判断から、パイロットらにストの再考を訴えた。

組合議長の行きすぎた発言に対する陳謝は行われたが、その後も約300人のパイロットたちは「威厳のあるフライト」を求め、労組幹部らに対して抗議行動をおこなった。その後、9月6日にタクシン首相が介入し、今年3月に起こった飛行機爆発事故(首相と長男が搭乗予定であった)及び度重なる爆弾脅迫事件などの責任も含め、ピシット社長と理事が解雇された。

各航空会社のパイロット平均月給
航空会社名 平均月給(バーツ) 日本円換算額(1バーツ=3円)
ユナイテッド航空 683,000 2,049,000
キャセイ航空 791,000 2,373,015
中華航空 694,000 2,082,000
大韓航空 495,000 1,485,000
シンガポール航空 420,000 1,260,000
マレーシア航空 245,000 735,000
タイ航空 135,000 405,000

出所:タイ航空労働合

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