人材派遣業の成長止まる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

長年にわたり、その大半が国際複合企業の一部である人材派遣業は、これまでスウェーデンにおいて最も急成長した分野であった。過去10年間にわたり、マンパワー・スウェーデン社は70%の年間成長率を維持してきた。しかし、工業部門では、ITコンサルタントサービスとの契約を打ち切ると同時に派遣労働者との契約更改をしないことで費用削減を行う企業が増え、成長が止まった。それと同時に、長年にわたり労働者派遣ビジネスの拡大に反対していた組合と労働当局に受け入れられ、同業界はその地位を向上させた。

というのも、かつて労働者の派遣は「闇会社」の手にあり、主として就労許可を得ていない外国人労働者を製品納入期限の厳しい造船所やエンジニアリング会社へ送り込んでいたからである。こうした会社に雇われた労働者の雇用は不安定で、所得税は納められず労働環境規定も守られなかった。次に現れたのが人材派遣会社で、民間企業や、一時的に財政が逼迫していた中央政府を始めとする公共行政機関に事務職労働者を供給した。これらの人材派遣会社は大都市を中心に活動し、今でもこの業界の総売上高の57%はストックホルム圏が占める。

現在、全ての人材派遣会社は労働協約の対象となっており、派遣されていない時でも、労働者には所得の全額もしくはそれに近い額が保証されている。職員労働組合連合(TCO)傘下の商業部門従業員組合である商業俸給労働者組合(HIF)は、人材派遣会社の従業員のために、組織化と協約締結というパイオニア的仕事を成し遂げた。この業界で適正な労使関係を要求した闘いが実ったことにより、労働市場庁が民間部門の人材派遣会社を利用するに至り、現在では、特に大規模工場が閉鎖された場合に活用している。エリクソン社の国内の生産施設の再編は、その最も重要な例である。人材派遣会社側もスウェーデン式の使用者連盟であるSPURを既に組織している。

現在スウェーデンには400の人材派遣会社があるが、その内5人を越える従業員を擁するものは200社に過ぎない。この業界における従業員総数は4万2000人で、これはスウェーデンの労働力人口全体の約1%に当たる。2000年の総売上高は80億5000万クローネ、1999年から売上高を65%増していた。(SPUR発表の2000年統計データ)

労働力人口に占める人材派遣会社労働者のシェア
オランダ 4.5%
アメリカ 2%
フランス 2%
ベルギー 1.6%
EU 1.5%
スウェーデン 1%
ストックホルム 2.4%
ドイツ 0.9%
スペイン 0.8%
ノルウェー 0.7%
フィンランド 0.5%

資料出所:SPUR

向上部門では有能なスタッフを調達するのに、人材派遣会社に頼ることが少なくなった。その結果として、この業界の成長が(一時的かもしれないが)止まった。代わりに労働市場当局は向上部門から解雇された労働者の面倒を見るために、従来の事務、管理、財務に加えて、他のサービスも視野に入れざるを得なくなっている。ターゲットとなる新たな分野は、ケア部門(主に登録正看護婦数が少ないため病院側に対し月額数千クローネの割増が優に要求できる)、学校、飲食店、販売店やビル・メンテナンスなどの部門である。特に医師、看護婦、教師は、正規雇用よりも高い賃金で派遣労働者として働くことができる。

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