失業者数は低水準だが解雇通知数は増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

7月末には、25万4000人が職業安定所に失業中として登録されたが、これは1年前に比べ5万4000人少ない。失業中あるいは労働市場政策に参加する若者および長期失業者の数も減少している。しかしながら、求人数は2万4000人止まりで、1年前と同水準にある。製造業部門から求人は少なく、エンジニアリング部門の新規求人は1年前の1100人に比べて600人に過ぎない。

1年前には1600件のみであった解雇通知が7月には3500件に増え、大多数の解雇が製造業、銀行、保険といった業種で起きている。2001年はこれまでに、1年前の2倍に当たる3万1000人の労働者が解雇通知を受けている。

詳細な統計は入手できないが、それでも銀行・保険部門では、ITコンサルタントが解雇されているのは明らかである。工業部門においては、解雇通知件数の大半はエリクソン社とその外注先、および自動車産業に責任があることも明らかである。

エリクソン社のケース

エリクソン社は、既に携帯電話の生産をアメリカ企業であるフレクストロニクス・インターナショナル社に引き渡した。フレクストロニクス社は、世界中の多数の企業向けに通信関連製品を生産している。スウェーデン国内のエリクソン社の工場労働者5600人が夏期休暇から職場に戻ると、彼等を待っていたのは1600人に対する解雇通知だった。解雇者数と解雇者決定については、共同決定法に基づいて交渉される予定であるが、エリクソン社とフレクストロニクス社は、まず生産施設の労働者全員を解雇してから、経営側が選んだ労働者を配置して新工場をスタートさせるという方式を既に練り上げているため、同法はほとんど骨抜きにされ、先任権規定は無視されている。

エリクソン社の再編成を監視する政府の特別代表であるハンス・カールソン氏は、スウェーデン労働組合総同盟(LO)の元副議長であるが、エリクソン社のこの戦略について「資本主義むき出しのやり口にはショックを受ける」と批判した。

1999年にエリクソン社がノルチェピング市にある工場を閉鎖した際には、同市、郡当局、職業安定所、その他多数の関係者たちが資金面での援助などでエリクソン社に協力し、数多くの新たな雇用プロジェクトをスタートさせた。また、ある人材派遣会社が解雇された労働者に対する責任を1年間にわたって肩代わりし、失業者を雇用適格者にするという仕事にあたった。即ち納税者たちが、エリクソン社の引き起こした混乱状況の整理に貢献したのである(「ノルチェピングモデル」と呼ばれている)。しかし今回はエリクソン社がその従業員に対して、より大きな責任を果たさない限り、同社の後始末をこれからも続ける覚悟が納税者たちにあるかどうか疑わしいとハンス・カールソン氏は感じている。スウェーデン最大の企業は、その従業員に対して、法で定められた最低限を超える責任を取らなければならない。

政府は、予想経済成長率の修正に余念がない。9月20日に経済予測が示される予定である。これまでのところ、第3四半期に輸出、輸入の双方が減少している。これは1993年以来初めてのことであり、輸出が2.1%、輸入が3.2%減少している。公共消費は1.5%上昇した。民間産業による投資額が2%上昇する一方で公共投資は2%減少した。

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