首相、派遣労働の拡大と解約告知権の改定を提言

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

シュレーダー首相は2001年8月23日、 従来制限されてきた派遣労働の拡大と示談に利用される傾向のあった解約告知権の改定につき、 法改正を提言し、 連立与党の緑の党、 野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、 使用者団体からの賛同を受け、 労働組合も条件付きで賛成している。

派遣労働について、 シュレーダー首相は、 それが多くの場合正規雇用への橋渡しになる可能性があることを指摘し、 その果す機能を過小評価すべきでないとしている。

派遣労働の改正内容について、 同首相は、 ドイツでは派遣の期間が短すぎるので、 期間延長について検討しなければならないとしている。 現行法では、 派遣期間は12カ月に制限されている。 また同首相は、 現行法では派遣元の労働契約期間は、 派遣先の労働契約期間と同一であってはならないという制約があるが、 この見直しも検討されねばならないとしている。

解約告知権の改定については、 同首相は、 解約告知がなされる際に雇用者に保護を与える手続きの重要性を指摘し、 それが不可欠であることは認めるが、 その保護手続きが乱用されて、 純粋な示談の権利の機能を果すようになることに反対する。 つまりドイツでは、 雇用者が解約告知についての保護手続きを威嚇的に利用して、 告知に際して雇用継続ではなく経済的利益を得ようとすることが行われる場合があるが、 このような乱用を防止しようとするものである。 同首相は、 雇用を維持し、 継続して労働を望む雇用者には告知に際して保護を与えるべきだが、 乱用して経済的な利益のための取引に利用するものには、 この保護を与えるべきではないとしている。

シュレーダー提言を歓迎する意見は以下のごとくである。

野党CDUは、 シュレーダー首相がこれまで期限付き雇用やパートタイム雇用の改定(本誌2000年12月号参照)等で、 同党の主張に反した条件の改悪を行ってきたが、 今回は従来から同党の要求していることを拒絶できなくなったものだとして、 提言に賛成している。 また、 緑の党の労働問題専門家テア・デュッカート氏は、 今回のシュレーダー提言は、 同党が従来から要求している派遣労働の拡充を支持することになると、 歓迎を表明している。 さらに使用者側では、 使用者連盟(BDA)が賛成を表明し、 派遣労働における派遣期間を36カ月に延長すべきだとしている。

他方、 労働組合も条件付きで賛成しているが、 エンゲレン・ケーファー労働総同盟(DGB)副会長は、 派遣期間を1年以上に延長することは、 長期失業者の派遣に限定され、 かつ2年目以降派遣先の通常の賃金が支払われるならば、 認められてよいとしている。 また、 同副会長は、 解約告知権の改定については、 示談を、 経済的要求ではなく、 積極的な資格付与や職場編入の交渉にもっと利用できるようにすべきだとしている。

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