最低賃金180バーツへの引き上げは非現実的

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

国営企業最大のタイ電力公社(EGAT)労組は2001年7月29日、その他の44労組と共に、タクシン首相に対して5月29日のメーデーの際に要求した項目に対して返答を求めデモを行った。

メーデーの4つの要求は、①社会保障制度に失業者を含めること、社会保障制度を従業員1名の企業から適用すること、児童手当を児童1人あたり150バーツから300バーツに引き上げること②最低賃金を全国一律180バーツに引き上げること③労働者の権利を無視した新労働関係法を破棄し、組合の草案によるものに改定すること④タイ・デュラブル・テキスタイルで解雇された390人の労働者の再雇用、である。

バンルーEGAT労組議長は、政府に対してこれらの要求を出しつづけていくと述べ、「経済不況による低賃金と、使用者側の不正な人員削減のために交渉権を失った労働者のために、政府がかつて尽力したことはなかった」と政府の姿勢を批判した。

これに対して政府は、児童手当を250バーツに引き上げることは検討しているが、その他の事項に関しては不可能だと述べている。その理由としては、例えば社会保障制度の対象を失業者にまで範囲を拡大したり、従業員1名からの企業にも適応したりすることは、最終的に労働者の保険金負担増に繋がり、それらを決定するには、政労使の3者会談での合意が必要なことを説明した。

なお、2001年7月31日に行われた、日本労働研究機構とタイ政労使三者招聘チームとの意見交換会において、「最低賃金引き上げの可能性は?」との質問を行ったのに対し労組側は、「2001年1月に最低賃金は引き上げられたばかりで、180バーツの最低賃金は非現実的。EGAT労組が注目を集めるための数字にすぎず、LTCやTTUCはEGAT労組の要求を支持していない」とのコメントであった。また、使用者側もEGAT労組側の最低賃金引き上げに対して、「最低賃金の引き上げが貧困削減に与える影響はごく僅か」であると反対の意思を示している。そして、アメリカの景気後退に伴う輸出業の減退が予想される中でのコスト増加は死活問題であると、タイミングの不適切さを強調した。

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