人材育成への投資、実施企業は5%以下

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

アメリカのコンサルタント会社の調査によると、タイ国内で人材育成に投資を行っている企業は全体の5%以下しかないことが明らかになった。1997年から4年間、企業は企業のバランスシートの改善に力を注ぎ、人材育成には目が行き届かなかった結果であると考えられる。その数少ない5%の企業のほとんどは、グローバルな開発戦略を持つ多国籍企業であった。

アメリカン・マネージメント・アソシエイション(AMA)・インターナショナルのメンバーであるAPMインターナショナルのアリンヤディレクターによると、「人的資源の質低下のため、数多くのアメリカ企業が2002年までにタイからの生産撤退を表明している」ということだ。

タイの人件費は、中国やベトナムと比べると高く、人材の質という面ではシンガポールや東アジア(韓国・中国)には劣っている。ダイムラークライスラーやBMW、トヨタといった外資系大企業では、いずれも人材の質的改善が最重要課題となっている。

アメリカに本拠地を置く政治経済コンサルタント会社ぺルク・アジア・パシフィックのブロードフッドディレクターによると、タイが低コストのインセンティブを持てずに、または高い質の人材を保てない場合には、外国からの直接投資は他国へシフトするであろうと予測している。

とはいえ、タイ国内でも人材教育に投資を行っている企業も存在する。タイ銀行やタイ農民銀行などである。特にタイ農民銀行では、2001年の人材教育費を1億5000バーツ充てており、2000年と比べて20%の増加となっている。その内訳は、マーケティング技術、ボトムラインの底上げに必要不可欠な手法などで、銀行が顧客を待っているだけの時代が終焉したことを示している。同行のスタッフは、経済危機によって、人材投資以外の支出削減を余儀なくされたが、人材の育成こそが競争力を保つカギとなる、と述べている。

コンサルタント会社、アクセンチュアのゴードン氏は、「タイの企業は現在まで既存の形で成功してきたが、これからは外資系企業の台頭の中で、才能溢れる人材を持っていることが競争に強くなる条件である」と述べている。

従来の人材教育は、サービスや販売技術といった基本的な技能に集中していたが、これからは創造性や感情的知性(emotional intelligence)を高める訓練が必要となってくる。前出のアリンヤディレクターは、創造性、モティベーション、インスピレーションが、ルーティーン技術よりも重要であるとし、ゴードン氏も、前向きな職場環境を構築することが最も大切と述べている。また、企業の変革は上部からということも付け加えた。

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