解雇者数、経済危機以降再び増加傾向に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:2001年10月

1997年の経済危機以降、回復傾向にあると見られていた労働市場において、企業の倒産数や解雇された従業員の数は再び増加傾向にあるようだ(表1参照)。

企業内のコストに占める人件費の割合は産業によって異なるが、製造業においては約10~25%、サービス業においては約50%を占めるといわれ、コスト削減に力を入れる企業にとっては、重い負担となっている。

企業のダウンサイジングには、業績の低い従業員数を削減し、残りの従業員の効率性と生産性を向上させるという、主に2つの目的があるとされている。しかし、多くの企業で採用されている早期退職制度などは、やる気があり生産性の高い従業員が辞めてしまうという危険性もある。

労働関係の裁判の増加

中央労働裁判所によると、1996年までは労働関係の裁判が1年に約1万5000件以下であったものが、1998年には2万3236件に急増した。これは、経済状況の悪化だけでなく、1998年の労働保護法の改定により、最大180日間分だった解雇手当が金属年数に応じて8~10ヶ月分に引き上げられたためである。使用者側は解雇手当の額を最小にしようと、改定前に従業員を解雇したためこのような数字となっている。その後、1999年の裁判数は1万9500件に減少したが、それでも1997年以前より増加している。

人員削減成功の要因と今後の見通し

人員削減問題は、経営者にとっても従業員にとってもセンシティブな問題であるが、成功例もある。例えば、タイ農民銀行では、早期退職制度により、この6年間で約6000人の雇用削減を進めてきた。解雇手当の法的最低額の何倍もの手当てを支給し、社員に他の企業で就職する機会を探すインセンティブを与えた。同時に、同社に残ると決めた社員に関しては業績主義の賃金体系を適用。そして、支店マネージャーと従業員との個人的な話し合いによって、社員一人ひとりのキャリアや将来を考える機会を持つようにした。また、業績が思わしくなく、早期退職制度を拒否した社員に関しては、給与引き上げの凍結などを行った。

経済及び労働の専門家は、今後も経済状況が変化しない限り、企業の人員削減が続くと予想しており、雇用創出なしには経済回復や消費の拡大もありえない、とコメントしている。

倒産した企業数と解雇者数
  1995 1996 1997 1998 1999 2000 21001
企業数 74 77 903 5,864 2,280 5,645 1,137
従業員数 6,936 5,015 44,753 356,367 105.499 151.484 30.119

出典:労働社会福祉省

注:2001年は第1四半期

2001年10月 タイの記事一覧

関連情報