好況下でも差別、不平等が縮まらず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

首相、人種差別の大規模調査を指示

ブレア首相は、保健・教育・労働市場での人種差別に関してこれまでで最大規模となる調査を実施するよう指示した。最近の研究や公式統計で、黒人、アジア人、白人の間の格差が広がっていることが分かったためだ。

たとえば、白人とマイノリティーの間の失業率格差は、景気後退期には拡大し、好況期には縮小するのが通例であるが、最近の『労働力調査』では、成長が持続していながら格差が拡大している。1980年代後半の好況時に失業率格差は1.4倍であったが、同じ好況期にもかかわらず2000年春は2.4倍、また2001年1月は2倍で、高止まりの状態が続いている。

また最近の調査では、人種的マイノリティーの間での格差も明らかになっている。たとえば、インド人男性の失業率は白人とあまり違わないが、黒人のそれは27%で、白人の5倍近くにもなっている。また等しく高学歴をもっている場合でも、ブラック・アフリカ人よりもバングラデシュ人の方が就職が困難な状況にある。

最近、オールダム、ブラッドフォード、バーンリーで、この20年間で最悪の人種暴動が起きた。その主な原因が労働市場での差別にあることは一般に認められているが、さらにその差別の原因を明らかにすることが、今回の調査の目的である。

労働党政権下で不平等・貧困減らず

労働党が政権について最初の3年間(1997~2000年)に、不平等と貧困は縮減していないことが政府の公式統計で明らかになった。1999~2000年の1年間では、貧困線以下で生活する子供の数はわずかに減ったものの、統計をまとめた労働・年金局によれば、最初の3年間全体ではほとんど変化は見られないという。

統計はまだ一部しか明らかにされていないが、たとえば、1998~99年と1999~2000年の間で、平均所得の6割未満の所得者は20万人しか減っておらず、相対的貧困(政府定義)を下回る所得者は依然として1000万人もいる。また総所得のうち下位所得者10%が占める割合は2.9%に低下している(上位10%は27%を占める)。

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