1844年会社法、抜本改正へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

貿易産業省は7月26日、日本の商法に当たる会社法の改正案を発表した。小企業の優遇や取締役会の機能強化を盛り込むなど、同法が1844年に制定されて以来の抜本改正となる。政府は法人税を軽減するなど企業の競争力強化に努めているが、会社法の改正もその一環である。

会社法の見直しを進めてきたのは政府の諮問機関、「会社法検討調査会」。同日に貿易産業省に提出した最終報告書は559頁に及び、改正案は合計84項目。同省は2年以内に最終案をまとめ、2004年前後の施行を目指す。

改正案の要は、英国企業の99%を占める小企業の負担軽減で、①意思決定に関する法的要件を簡素化する、②小企業の事業運営を促進するように会社法の簡素化をはかる、③企業監査の負担を軽減する、④法律自体を分かりやすくする―がその柱。以下、各要点をあげる。

意思決定の簡素化

現行会社法は、年次総会での株主による意思決定方式について、遵守すべき手続きを定めているが、これを以下のように簡素化する。

  1. 年次の総会・会計報告・監査役再任は、会社自身が、もしくは株主が、それを求めない限り、必要ない。
  2. ある決定について株主が全会一致で合意したときには、会社法や会社定款の規定に従うことなく、その合意は尊重される。
  3. 全会一致の条件を緩和することにより、株主による意思決定を容易にする。
  4. 意思決定は、電子通信(インターネット)によっても、可とする。

会社法の簡素化

  1. 会社は総務担当重役(company secretary)を任命する必要はない。
  2. 取締役の職務を新法で明確に一覧化する。
  3. 株主間の争いの際、多額の訴訟費用を避けるため、訴訟に代わる紛争解決法を利用しやすくする。
  4. 自社株購入のために会社が資金援助をすることを禁じた複雑な規定を廃止し、会社の金融取引を簡素化する。

会計報告と監査

  1. 小企業の会計制度を利用できる企業の範囲を欧州法の許容する最大限まで広げる。具体的には、(a)年間売上げ4800万ポンド以下、(b)貸借対照表2400万ポンド以下、(c)従業員50人以下―のうち2つを満たせば、利用できるものとする。
  2. 同様に監査義務を免除される企業の範囲を広げる。
  3. 企業会計の形式と内容を簡素化する。
  4. 会計報告の期限を会計年度末後10ヶ月から7ヶ月に短縮する。年次総会を開く企業はそのかぎりではない。

会社法の利便性を高める

現行会社法は主に大企業を想定しているため、小企業は自らの従うべき規定を特定するのが困難である。それぞれに該当する規定を明確に区別して、会社法を小企業にとって利用しやすいものにする。

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