職場メンタルヘルスへの着目が急務

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

労働社会福祉省精神保健局のポーンテップ副局長は2001年6月28日、労働者の精神保健 (メンタルヘルス) 問題により多くの注意をはらうべきであると警告し、そのための社会保障制度の見直しが必要であることを発表した。現在の社会保障法では精神保健問題への保障が不充分であり、改定が必要であるとみている。精神保健上の問題とは、職場での不快感、ストレス、鬱、不安感などを含む。

同局の1999年のサーベイによれば、労働者の約6~10%がアルコール・麻薬中毒者と認定され、1995年の2%と比較すると飛躍的に増加している。ヴィナイ同局長は、「労働者の精神保健問題が与える経済的コストに関しては、まだ確立された計算方法が存在しないが、同局は『白い工場計画(White Factory Projects)』と銘打ったプログラムにおいて、労働者の精神保健問題と麻薬乱用問題に取り組む方針である」と述べている。

タイではラオス、ミャンマーとの国境に麻薬の生産地「黄金の三角形(ゴールデントライアングル)」を抱え、比較的安価で容易に麻薬を手に入れることができる。そのため、労働者だけでなく学生の麻薬乱用も大きな問題となっている。

学生に対する心のケア

学生に対しても精神的ストレスに対処する方法を指導するため、まず教員に対しての精神保健講座が開催された。ヴィナイ局長は、学生だけでなく教員にも精神保健上の問題に注意を向けさせる必要性を強調した。

2000年7~8月に32県、1020校の530万人の学生に対して行われた最新の全国調査によると、全体の30%の学生が精神保健問題に悩まされており、そのうち15~20%が鬱や自殺傾向などの症状が現れているという。またそれらのはけ口として、中学生の34.2%、短大生26%、高校生の24%が「麻薬を使用したことがある」と答え、全体の12.4%が麻薬乱用者であることが分かった。

国境周辺の移民労働者にも

ビルマ医療協会(BMA)の医師らの報告によると、タイとミャンマー国境付近の移民労働者の精神保健問題と伝染病の拡大が大きな問題となっていることが明らかになった。ミャンマーから難民や低賃金労働者として働きにきている人々は、適切な心のケアへのアクセスを持たず、公衆衛生に関しての知識も乏しいことから、問題はさらに深刻だ。

同協会副会長のミャ・トー医師は、「移民労働者の間で伝染病が広がる一方で、精神保健問題も拡大しており、経済的な困難に直面した多くの労働者は安易に麻薬を使用してしまう」と説明、問題の深刻さを訴えた。

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