地方自治体現業労働者は最善の待遇を享受

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

2001年5月11日、地方自治体の交渉当事者たち、つまりブルーカラー労組SKAF(Kommunal)、地方自治体連盟Kommunforbundet、県評議会連合Landstingsforbundetは1カ月以上も遅れて、新3カ年協約を最終的に締結する運びとなった。

調停者が示した第一次案には主要問題の重要な打開策が含まれていたが、不十分な賃上げも入っており、使用者側はこの案を受諾したものの、組合側は拒絶した。その後の第二次案にも賃上げ方式が含まれていた。通常、一方の当事者(一般的には使用者側)が一次案を受け入れた場合、調停者は第二次の最終案で他方の当事者の反対意見に応じようと配慮する。

協約合意内容は小売業部門の協約内容に沿ったものである。本協約は、3カ年にわたる11%(3.8%と3.7%と3.5%)の賃上げである。ただし、以下に示すようにパートタイム労働者にはさらに有利な待遇改善が行われ、休暇特別手当の増額、より寛大な付加年金が定められた。また、熟練労働者には、追加的な待遇改善が正式に保証されている。このため、使用者にとって、新協約の賃上げによるコスト増は、工業労働者の場合8.5%であったが、自治体現業労働者の場合12%増に近い。

「本協約は地方自治体の熟練労働者(高校程度の職業訓練を受けた)が、待遇面で工業部門の熟練労働者に追いつく展開の序章である」と組合指導部は確信している。現在、工業部門熟練労働者の月収は1万9000クローネである。これに較べて、地方自治体の熟練労働者の賃金は月額1万7000クローネであり、ほぼ2000クローネの差がある。地方自治体のブルーカラー労働者の平均的な月給は現在、1万4800クローネである。新しい協約によって、協約上の最低賃金は1万2000クローネから1万2400クローネに増額された。各労働者はこれら3年の各年の期間中、月250クローネの増額を保証されている。事業所での個別交渉で定められる上乗せ分は、個別労働者の勤勉さと熟練度と生産性に依存する。事業所における交渉では特に熟練労働者に配慮するよう、労使は合意した。2002年末、これらの交渉による分配についての評価を行う予定である。組合側がその結果に満足しない場合には、組合側はすでにその段階で、2年後に協約を終了できる。このことが、熟練労働者の給与を11%以上昇給させることを使用者に認めさせる十分な圧力になるだろうと組合は期待している。

地方自治体には女性を主とする多数のパートタイム労働者がいる。組合はこれらの組合員すべてがフルタイム雇用の権利を持つよう望んでいる。これは現政府の政策でもある。しかしながら、勤続年数の長いパートタイム労働者がフルタイム雇用されると、新たにパートタイム労働者が雇われることになる。新協約では、雇用が不安定な労働者はすべて、有給休暇手当全額と付加年金を取得する。このため、パートタイム従業員には、実質上、通常の賃上げに加えて6%から9%の賃上げが行われることになる。

労使は新しい付加年金協約にも調印した。これによると、使用者の保険料支払い開始時期は現在では従業員が28歳の時だが、それに代わって従業員が21歳の時となる。2004年以降、使用者は賃金の4%を従業員が決めた年金基金に払い込まなければならない(これまでは使用者が付加年金を管理してきた)。労働者各人は年金保険料を4%から自費で6%まで増額するか、あるいは3%まで減額する権利を持つことになる。後者の場合、労働者が1%の賃上げを得られる。

地方自治体が協約を尊重し、熟練労働者、例えば3年間の高校教育を受けた准看護婦や完全な職業訓練を受けた消防士などに特別賞与を出すもう一つの理由は、支援、ケア、教育などを必要とする高齢者や若者の数が急増しているので、地方自治体が必要な職員を引きつけるためには、競争力のある賃金と労働条件を示さなければならないことである。 一連の協約に関するLOの評価  団体交渉によって、現在、すべての部門で3カ年(ただし、例外として、中央政府部門、建築・建設部門では1年、教員部門と登録看護婦部門では5年、地方自治体ホワイトカラー部門では4年)の協約が締結された。スウェーデン労働組合総同盟(LO)のワンヤ・ルンドビ-ウェディン委員長は、それらの交渉を次のように評価している。「本同盟は交渉には直接関与しなかったが、最低給与所得層に対する最低賃金の増額とその他の特別増額措置を通じて、最低給与所得層に重点を絞った同盟の戦略が功を奏した」。同女史は、雇用が不安定な人々の労働市場の地位も改善されたと考えている。言い換えれば、この賃金交渉ラウンドはスウェーデン労働組合総同盟(LO)の伝統的な賃金政策、つまり連帯的賃金政策にとっての勝利であった。

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