67歳まで働き続ける権利を与える法案に労使が反対

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

労働者が67歳まで働き続ける権利を与える政府法案は、労働協約内容に政府が介入することを批判する組合、使用者双方からの強い反対にあっている。この法案によれば、労使は、退職年齢を67歳以前に規定した労働協約を新たに締結できなくなるだろう。法案成立以前の協約は有効だが、2003年1月1日以降、古い退職年齢条項は現行の労働協約から削除せねばならないだろう。

スウェーデン労働組合総同盟(LO)と職員労働組合連合(TCO)は、議会の労働市場委員会で議員に対して、「本法案は労働協約を締結する権利に関わる労働市場の基本原則と国際労働機関(ILO)及び欧州理事会の関連国際条約のすべてに違反している」旨を明確にした。政府が団体交渉に干渉できるのは、安全と民主主義が危機に曝されかねない場合だけであり、退職年齢に関する法案には、あてはまらないことは確かである。

組合側は、年金制度の安定性を脅かすかもしれない低出生率と退職者の急増に配慮しているが、かかる事態に対処するために異なる政策を勧告している。それは、政府と労働市場の当事者たちとの間に常設の特別調査委員会を設け、労働に関わる疾病、傷害、それに関連した早期退職などを減らすための長期戦略を策定すべきというものである。つまり、「働くことが魅力的で、個人の潜在能力を伸ばすことを可能にする諸条件を準備すべき」なのである。

このような条件が広範に用意されれば、65歳に達するまでは就労可能な労働者の数が増えるだろう。67歳まで働き続けられる者もいるだろう。だが、現在では65歳よりかなり以前に大部分の労働者が仕事を辞めている。平均的な退職年齢は60歳をやや過ぎたところであり、団体交渉で取り決める退職年齢を政府が上げたところで、この年齢は大して上がらないだろう。

98年の年金改革により、長期間拠出した場合には年金額が増額されることになった。年金財政の好転のためには、多くの労働者が65歳以後まで働き続けることが望ましい。退職年齢を65歳以降にすることを労使が90年代に協議してきたが、今でも協約で定められた退職年齢は大部分が65歳のままである。また、大部分の労働者にとって、協約の65歳退職年齢に関する条項は65歳で引退する義務を意味する。政府は、高齢者の労働期間延長を実現するために、労働者が67歳まで働くことを義務づけず、67歳まで働く権利を保障する今回の法案を提出したと説明している。

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