解雇の補償金に関する労働大2000年第150号の改定に労組反発

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

2000年6月20日に公布された、解雇手続き退職金などに関する「2000年第150号労働大臣令」が、2001年5月に改定されたことに労組が大反発の動きを見せている。同大臣令は2000年に公布された当初から、インドネシア経営者協会(APINDO)などから「労働者に有利な内容が多すぎる」との批判が相次いでいた。例えば、6年以上勤続した労働者は退職手当として、それが自己都合であっても月給の600%相当額を受け取ることができるという部分(詳細は時報2000年11月号参照)。そのため、アル・ヒラル労移相は2001年5月4日、第150号労働大臣令の改訂版である「2001年第78号労働移住大臣令」を発令し、自己都合退職者への退職手当て支給義務を廃止し、使用者側の声に応えた。

一方この改定に対して、労組側はこの改定が外資系企業と国内の大企業経営者への優遇であるとして猛反発。5月11日、全インドネシア労働組合連合(FSPSI)のヤコブ議長は、政府機関前でのデモ活動および、2日間にわたる職場放棄、それでも政府が第78号労移大臣令の改定をしない場合には、6月にさらに大規模なデモを行うと宣言した。

また、インドネシア福祉労働組合(SBSI)のパクパハン議長も、FSPSIと協議・調整したのち、17日にも30万人の組合員で労働移住省を取り囲むデモを行うことを明らかにした。

こうした労組の抗議行動の結果、5日、6日の午後には、ヤコブ議長とアル・ヒラル労移相との話し合いが行われ、最終的に労移相は第78号労移大臣令の発行を2週間延期することを発表した。しかし同大臣令の改定や廃止には至らなかったため、5月21日には再びFSPSIの組合員がタンゲラン市庁舎を占拠し、第78号労移大臣令の廃止を訴えた。その後同労組の代表とタンゲラン市長の会談で、市長が労移相に組合員の要求を伝えることで合意に達し、市庁舎は解放された。2週間の発令延期の最終日である5月29日には、FSPSIだけでなく、インドネシア労働者闘争国民戦線(FNPBI)の組合員数百名と繊維・サンダル・皮革労働組合(FSPPTSK)の組合員数百名が、労働移住省で同大臣令の改定を求めデモを行った。

5月31日、アル・ヒラル労移相は労組や経営者側と雇用規定に関する会合を開き、第78号労移大臣令の補足のための新大臣令(「2001年第111号労働移住大臣令」)を発令、第78号で問題となっていた「懲罰や自己都合で退職したものに対しては退職手当てを支給しない」(35A章)という部分を再検討することで合意した。

しかし結局、新大臣令で、35A章の大幅な変更はなく、自己都合退職者の退職手当て支給は行われないこととなった。

FSPSIのヤコブ議長は、労組が求めているのは2000年第150号労移大臣令の復活であると語り、数万人の組合員とともに近くアル・ヒラル労移相の辞任を求める運動を開始することを明らかにし6月6日と11日には、首都ジャカルタだけでなく、スラバヤやセマラン、ビアックなどの各都市で、第78号および第111号労移大臣令の撤廃と労移大臣相の辞任を求め、FSPSIとSBSIを中心とした労組の大規模なデモを展開した。次いで6月12日、ヒカヤット労働組合代表とワヒド大統領が対談、ヒカヤット労組代表が要求した第78号および第111号労移大臣令に対して大統領は、「政府側としてはこの2つの法令を改定するつもりはない」と応えた。その結果、労働者による抗議活動はさらに激化し、西ジャワのバンドンでは30台の車と25台のバイクに火をつけての抗議行動となったほか、スラバヤでは工業地帯に続く道路を閉鎖するなど、暴力的な活動となってきた。

そのため政府は6月15日、政労使の緊急会合を開き、問題となっている2法令の施行を延期し、その間の雇用規制は「2000年第150号労移大臣令」に従うことを発表した。

その結果、労組側の活動は一時的に落ち着いたが、最終的な行方を見守るという状況となっている。

[2001年6月30日現在までの情報による]

解雇手当に関する労働大臣令の改定の動き

年月 事項
1966年 「解雇手当に関する1996年労働大臣令」が公布される
2000年6月20日 上記大臣令が改定され、「解雇手当てに関する2000年第150号労働大臣令」が公布される(当時:ボメル労相)
2000年9月 Apindoなど使用者団体から、「2000年第150号令」改定の要請の声が高まる(アル・ヒラル労相)
2001年5月4日 「2000年第150号労働大臣令」を改定、「2001年第78号労移大臣令」を発令する
2001年5月10日 各労組、改定に関してデモ開始
2001年5月15日 労組の反発によって、労相「2001年第78号令」の発令を2週間延期する
2001年5月31日 政労使の3者会合にて、「第78号令」補足のための新大臣令、「2001年第111号労移大臣令」を発令
2001年6月7日 インドネシア各地(ジャカルタ、スラバヤ、メダン等)で、「第78号令」および「第111号令」の改定を求めて、労働者のデモが展開される
2001年6月12日 ワヒド大統領、FSPSIと会談。大統領「第78号令、第111号令を支持する」と発言
2001年6月13日 大統領発言に労働者が大反発、各地で抗議活動(スラバヤ、ジャカルタ等)
2001年6月15日 労働者の暴動を受け、労相、「第78号令」および「第111号令」の発令延期を決定。その間「2000年第150号労移大臣令」を適用することが決まる

2000年第150号労働大臣令と2001年第78号労働大臣令との違い

項目 2000年第150号労働大臣令 2001年第78号労働移住大臣令
円満に希望退職した労働者の場合 雇用期間に応じた報奨金および補償金を得る権利をもつ。 補償金のみを得る権利をもつ。
重大な違反行為のために解雇された労働者の場合 雇用期間に応じた報奨金および補償金を得る権利をもつ。 補償金のみを得る権利をもつ。
年金プログラムに加入した労働者(年金受給年令に達していない場合)に対する解雇の場合 記載なし 年金制度加入済み、未だ年金受給年令に達していない場合、労働者は、解雇された場合、雇用期間に応じた報奨金は受け取ることができないが、退職金および補償金を受け取ることができるものとする
年金受給年令に達したための解雇の場合 労働契約書あるいは会社定款や労働協約の中に、すでに年金保証および年金給付についての定めがある場合には、労働者には、退職金、雇用期間に応じた報奨金および補償金を得る権利がないものとする。 年金受給額が雇用期間に応じた報奨金よりも少ない場合、年金の給付金/保証額が、退職金の二倍、雇用期間に応じた報奨金と同額分、さらに補償金と同額分よりも少なかった場合には、その差額分は、使用者によって支払われるものとする。
ストライキのために仕事を休んだ場合 掲載なし 現行の規定に従わずにストライキ行動を起こし、5日以上勤務を休んだ労働者は、勤務を怠ったものと判断されるものとする。

出典:スアラ・プルンバルアン紙、2001年5月17日

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