10年で1兆3500億ドルの大型減税法成立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

10年間で1兆3500億ドルの減税法案にブッシュ大統領が6月7日に署名、成立した。所得税率は2006年まで3回にわたって下がり、現行所得税の限界税率は、課税所得に応じて39.6%、36%、31%、15%と5段階だが、減税が完了する2006年には、35%、33%、28%、25%、15%、10%の6段階となる。遺産税(estate tax)も段階的に引き下げ、2010年に撤廃される。現在、1人当たり500ドルの子どもの税額控除は、10年後には同1000ドルに引き上げられる。同じ年収の場合、夫婦共同申告を行わない夫婦や単身者世帯よりも、夫婦共同申告を行う共働き世帯の税負担が重いという「婚姻への罰則」を解消するため、2005年から控除の拡大などが行われる。減税額の3分の2は、2005年以降に集中し、この時期に裕福な人々への減税の多くが行われる。ただし、これらの減税の大部分は、サンセット条項によって2011年に終わり、2011年には再び2000年の税制に戻る。しかし、議会の超党派の専門家は、議会が減税案を修正し、2011年に減税を終了させないであろうと推測し、実際の減税は1兆9000億ドルほどに達すると見る。

停滞気味の経済を刺激するため、所得税の最低税率の10%への引き下げを1月に遡って適用し、今年秋までに政府が小切手で送金する。還付額には上限があり、共働きの家庭で最大600ドル、1人が働いている家庭で最大500ドル、独身者で最大300ドルとなっている。

AFL-CIOはホームページで、上位10%の所得階層が総減税額の56.5%を受け取ることになるとしてブッシュ減税を批判する一方で、ブッシュ大統領の原案が上院で修正を迫られた結果、最低所得税率が10%に引き下げられ、さらに子供の税額控除が設けられたため、低所得の勤労世帯も恩恵を受けることになったとしている。

一方、共和党保守派は、富裕層への減税が先延ばしされ、減税が行われない可能性があること、また、減税が2010年に終了することに困惑している。

総減税額を1兆3500億ドルに抑制するために、共和・民主両党が妥協を重ねた結果、10年間の時限を切った減税など、必要以上に複雑な税制改正となった。十分に議論が尽くされたとは言えない減税法案に対し、すでに共和・民主両党が2011年以降の減税や企業減税などを提案しようとしている。議会では、ブッシュ政権の保守派色を嫌った共和党穏健派のジェームズ・ジェフォーズ上院議員が、減税関連法案が大統領に送付された後に共和党を離党し、民主党が上院多数派となり、上院での勢力地図が塗り変えられ、労組の意向が議会に反映されやすくなった。

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