失業率4.4%に低下、非農業部門雇用者数は減少

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

2001年6月1日に労働省が公表した雇用統計によると、2001年5月の失業率は、前月比0.1ポイント低下し、4.4%となった。この低下は、就業者数が約25万人減少したものの、多くの職を失った労働者が求職活動をやめたため、労働力人口が約50万人減少したためである。5月に、求職活動をしたが仕事を見つけることができなかった人は600万人で、4月の620万人から減少している。また、過去12カ月間に求職活動をしたことがあるが、求職しても働き口がないことを理由に、過去4週間以内に求職活動をやめた労働者の数は32万5000人である。

よく知られているように、失業率は、雇用情勢を記述するために欠陥のないものではない。失職後、すぐに就職する意志がなくても失業給付を受けるために求職を続け、統計上、失業者となったり、あるいは逆に、自身や知人の職探しの経験から求職を断念して労働力人口に含まれない労働者がいる。米国の大部分の推計によれば、後者(求職断念者)を含めると失業率の数値は、約0.5%上昇する。そのため、特に失業率の月次の変動を解釈するには注意が必要で、失業率の0.1%改善は雇用情勢の改善を示唆するとは限らない。

さらに注意を要するのは、州ごとの失業率の信頼度である。オハイオ州の4月の失業率は3.9%だが、州はこの数値が誤っているはずだという異例の見解を示した。州の職員は、製造業の一時解雇が相次ぎ、失業保険受給申請には長い列ができていることを知っている。実際、2001年4月の失業保険受給申請者数は、2000年4月(失業率は4.1%)よりも68.8%増加している。また、ほぼ同じ産業構造を持つ近隣諸州は、現在、より高い失業率となっている。州の失業統計の信頼度が低い理由は、サンプル・サイズが小さいことや、州内のすべての郡について調査されておらず、低所得層の多い地域や雇用削減が起きている地域での調査が不足していることなどによる。これらの理由から、製造業は不振だが、ビジネス・サービス、医療サービス、レストランなどが好調なオハイオ州のように、州内の労働需要について、良い動きと悪い動きが同時進行している場合には、偏った数値が出やすくなる。

一方、5月の国内の非農業部門の雇用者数は前月比1万9000人減で2カ月連続の減少となった。製造業の雇用者数は10カ月連続の減少で、前月比12万4000人減少した。非製造部門では、建設業、石油、ガス産業が雇用者数を増やし、製造業における雇用減の大部分を相殺した。

労働省は、過去2年間の雇用者統計について、非農業部門雇用者数の2001年3月における減少を5万9000人の増加と改定したほか、2001年4月の22万3000人の同雇用者数減を18万2000人の減少へと改定した。雇用者数の減少は、従来考えられていたほど急ではなかったことがわかる。

消費に急激な落ち込みが見られないものの、2001年第2四半期はまだ、企業利益や設備投資が減少している。しかし、政策当局者は、これをすでに予想しており、積極的な金利引き下げや大型減税の効果が出始める、2001年後半の経済動向に早くも注目している。

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