失業保険の実施が最大の焦点に、2001年のメーデー

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

2001年のメーデーでは、失業者に対する社会保障制度の適用が最大の焦点となった。2001年5月1日の集会で、約2000人の労働者と9つのナショナルセンター及び国営企業労使協議会(The State Enterprises Relations Confederation)の代表がロイヤル・プラザに集い、15項目をタクシン首相に要求した。主要な要求は以下の通り。

  1. 失業者のための社会保障制度の実施
  2. 最賃の改定及び新しい賃金構造の構築
  3. 労働保護に関する2541(タイの仏暦。1998年)年法の改正
  4. 国営企業の労働関係に関する2534年法を撤廃し、国営企業の労働者も労働関係2518年法の下で、民間企業の労働者と同様の扱いを受けること

バンコク以外でも、地方都市で小さな集会などが開かれたが、毎年労働運動が小規模になってきているとの声が高い。労働運動の弱体化が指摘されるようになって久しいが、その要因を各専門家はいろいろな点から指摘している。

チュラロンコン大学経済学部ナロン博士は、「最近の労働組合は黄色い葉のようだ(元気がない)。意思決定の過程に参加できるようなよい制度を持たない労働者は本当に残念である。労働組合のリーダーは『ボス』というよりもむしろ『代表者』として行動すべきであり、自身の利益よりも組織全体の利得を守るために努力すべきだ」と語っている。

また、国営企業労働関係協議会のバンヤット前副議長は、労組には適切なリーダーと思索家が不足している点を指摘し、「真のリーダーとはプロであり、問題を見極め、目標に向けて努力する人でなくてはならない。今のところ、リーダーと呼ばれる人々は労働争議が起きた時だけ首を突っ込んでくるような人ばかりである」と述べた。また労働組織の弱体化の要因には、上記のような内的な要因と、政府の干渉や効果を奏さない労働法の存在という外的な要因が存在することも付け加えた。そして、ここ数年メーデーで労働者が訴えつづけてきた要求が実現していない点も、労働者が政府に対して不満を募らせている理由の1つであると述べている。

アロム・ポンパンガン財団のチョケチャイ博士は、コミュニティーとして労働運動に参加することの意義を唱えている。労働者が問題に取り組む際には、グループ化し解決にあたるという視点が欠如していると指摘している。

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