SAFが解散し、新使用者団体設立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

2001年3月29日、ストックホルムにおいて極めて重要な年次総会が開催された。

1910年設立のスウェーデン産業連盟(Sveriges Industriforbund、SI)が、2001年中に段階的に解散、1902年設立のスウェーデン経営者連盟(Svenska Arbetsgivareforeningen、SAF)がSIの存続部分と合併し、スウェーデン企業連盟(Foreningen Svenskt Naringsliv)が設立された。

使用者団体の合併は、主にメンバー企業とその従業員にとっての関心事であり、また使用者がコストと時間を節約する手段と見ることができる。しかし、今回の合併については特に触れる価値がある。スウェーデンでは働く人々の生活や労使関係が徐々に変化していることと関係があり、様々な議論を呼んでいる。

SAFとSIの合併の動きは今回が初めてではない。1973年にシュワルツ報告(Schwartz Report)により合併が勧告されたが、その時は何も起きなかった。95年にSAF、SIと卸売業連合間で合併交渉が進められたが、最終段階でSIが拒否したためその努力は失敗に終わった。

新しい組織の名称はスウェーデン企業連盟(Svenskt Naringsliv。頭文字をとった略称は用いない。英語名称はConfederation of Sweden Enterprise)である。この団体は以前よりも多くの分野を担当し(通商、エネルギー、運輸政策を含む)、またうまくいけば以前のSAFとSIの2つの団体よりも強力なものとなるであろうが、規模は大きくはならない。SAFは4万6000近い数のメンバー企業を擁していた。SIは約7000社を擁していたが、その90%以上がSAFのメンバーでもあった。したがって新しい団体は、当初約4万6000社を率いることになる。

メンバー資格は任意制のままである。当初はSAFと同様に、各企業が給与支払総額の0.1%を会費として支払うが、この額は企業の規模により多少異なる。

今後、重要な役割を果たすのは、SAFとSIの現在52あるメンバー協会(使用者団体)である(以前のように、会社は1つ以上の協会のメンバーであると同時にスウェーデン産業団体のメンバーでもなければならない)。これらの協会は1990年代にかなり合併するか少なくとも共同事務所を設立しており、この傾向は今後も続くと見られる。SAF加盟諸団体(大部分が工業・サービス部門経営者組織<ALMEGA>やエンジニアリング産業経営者団体連盟<VI>のようなグループの形で活動している)の規模のほうが大きかったことと、労働問題がこれらの協会で扱われることが増えてきていることから、これらの協会が支配的な存在になることは間違いない。このため、スウェーデン産業団体の役割は原則として調整と専門的な役割のみとなる。

SAFが自ら解散した重要な理由の1つは、スウェーデン労働市場の中央集権化を切り崩す努力を継続するためである。中央集権的労使交渉モデルは、1950年代、60年代には労使による問題解決に基づいていたためかなりうまく機能したと言えるだろうが、ひとたび政府が介入するようになり、70年代に労働関係の法律が数多く導入されると、このモデルがゆがめられ、本来果たすべき機能を果たさなくなった。SAFは83年以降、徐々に中央集権的賃金交渉のやり方をやめ、90年には完全に取りやめた。とはいえ、最近の賃金交渉に見られるように、中央集権化は未だに強い影響を残している。SAFの撤廃はその意味で、労働組合から、労使交渉における使用者側の中心的交渉相手を奪うという心理的な効果がある。

新しい団体は以前の2つの団体よりもスリム化され、これまで以上に、欧州あるいは国際規模の問題に力を注ぐ。新組織の目的の1つは、あらゆる官僚主義を回避することにあり、現代の労働生活を反映して階層化された組織を避けるために、スウェーデン産業団体に部局や課は全く設けない。様々な問題についてそれぞれ責任者を置くが、考え方としては、プログラムとプロジェクトの形で仕事を進め、状況の変化に速やかに対処できるような弾力的な組織にする。プロジェクトには外部からの専門家(例えばコンサルティング、企業、大学などから)をこれまで以上に起用する予定である。

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