Verdi、正式に発足

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

組合員約300万人を擁する産別労組としては世界最大の「統一サービス産業労働組合」(Verdi)が、3月19日にベルリンの結成大会で正式に発足した。組合員数としては、戦後ドイツに君臨した約270万人を擁するIGメタルを抜くことになった。

Verdi設立をめぐる紛糾により、公共部門労組(OTV)で委員長交替劇に発展し、ブジルスケ新委員長が選出されてからは、Verdiの幹部会構成、13の専門領域の統括等、組織の枠組についても他の参加4労組との協議が順調に進み(本誌2001年2月号、3月号参照)、Verdiの正式発足は確実視されていた。そしてVerdiの中核となるOTVの3月16日の最終代議員大会でも、必要とされる賛成得票80%を大きく上回る87%の賛成得票が獲得された。さらに結成大会では、Verdi連邦幹部会への支持率は95%に達し、初代Verdi委員長に予定通り選出されたブジルスケ氏は強力な支持基盤を獲得することになり、また4人の副委員長にも他の参加4労組の幹部が選出され、サービス業部門の5労組の合併は正式に成立して、ドイツ労働界の再編に大きな一歩が記されることになった。

ブジルスケ委員長は、就任受諾に際しての基調演説で、今後Verdiを指導していく基本方針を、以下のように述べている。

同委員長は、まず組合員を増加させることをVerdiの中心目標に掲げ、最近の組合員の減少傾向を逆転させねばならず、サービス業部門では特に30歳以下の組合員の増加を図りたいと述べている。そして、Verdi組合員を将来増加させる可能性の大きい分野として、コンピューター・マルチメディア部門を筆頭に、広告代理店業、民間郵便業、民間放送部門、民間介護部門、教会関係等を挙げている。また同委員長は、このような諸分野で組合員を増やすために、労働時間等に関する弾力的な対応の必要性を強調し、例えばウェッブデザイナーが12時間労働する場合、それを禁ずることがVerdiの課題にはならないとしている。

このような弾力的対応と同時に、同委員長は、労働協約貫徹のためにサービス業部門では、ボイコットの呼びかけ、抗議行動等で消費者や市民を動員する闘争的手法が重要であることも強調している。

また、従来の最大労組IGメタルを中心とするDGB傘下の他の産別労組との関係では、同委員長は協調路線を呼びかけ、Verdi所属組合員を増やすことが目標でも、他の産別労組の領域を侵害するようなやり方はしないと述べている。

このようなブジルスケ委員長の基本方針に対して、ツビッケルIGメタル委員長も、IGメタルは新たな強力なパートナーの誕生を歓迎し、Verdiとライバル関係に立つことを意図しないと述べている。また、リースター労相も、巨大労組Verdiの成立はドイツの労働組合運動の一致と強化の重要な一歩であると、歓迎の意向を表明し、労働総同盟(DGB)内部での協調を要望している。

とはいえ、「雇用のための同盟」についてのシュレーダー首相の発言に対して、ツビッケル委員長が同盟からの脱退発言をしているのに対して、ブジルスケ委員長は、同盟の具体的成果に対しては批判的立場を堅持しながら、脱退の必要性は明確に否定して、IGメタルの強硬姿勢と早くも一線を画する態度を明確にしており([Ⅰ]参照)、今後の両労組の利害対立の動向が注目される。さらに、従来ドイツの労組を観察する場合、強硬路線を取りがちなIGメタルと柔軟路線を標榜する鉱山・化学・エネルギー労組(IG BCE)の対比が常に注目されたが、Verdi誕生によって、前2労組と対比さるべき第3の柱が出現したことは確実で、今後はこの3労組の利害の動向も注目されることになる。

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