最低賃金、4.1ポンドへ引き上げ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

現在3.7ポンド(1ポンド=171.6円)の最低賃金が2001年10月に4.1ポンドに引き上げられる。150万人が恩恵を受けるが、うち70%は女性。さらに2002年10月には4.2ポンドに引き上げられる見通しである。若年労働者(18~21歳)の最賃は現在3.2ポンドだが、これを引き上げるかどうかは5月に決定される。労働党政府としては、総選挙を前に最賃の引き上げを表明することで、政府は伝統的な支持者をないがしろにしているとの批判をかわしたい意向だ。

今回の決定に対しては、財界は4ポンドを予想していただけに、雇用にマイナスの影響が出るとの警告を発している。英国商工会議所のクリス・ハンフリス事務局長は、不採算企業は負担に耐えられず、企業の生き残り競争、ひいては雇用に悪い影響がでることは明らかだと論評している。英国産業連盟(CBI)は今回の決定を容認しながらも、中小企業が今回の引き上げで生じる超過コストを吸収するのは容易ではないとの見方を示している。

こうした財界の反応に対してステファン・バイヤー通産大臣は、今回の引き上げは、影響を受ける労働者層にとっては実質的なものでありつつも、雇用や経済に悪影響を及ぼすほどのものではないと反論しており、低賃金委員会(LPC)もこうした見方を支持している。一方労組は、今回の決定を歓迎しているものの、2002年10月の引き上げ額が10ペンス(4.1~4.2ポンド)にとどまったことに関しては懸念を表明している。

最賃については、実施を怠る使用者が最近増えていることが問題となっている。内国歳入庁が1999年4月からの1年間に最賃の実施を命じる通達を出した企業の数は136社であったが、2000年4月からの10カ月では171社に増えている。

最賃の権利を有しながら受け取っていない労働者の数について労働組合会議(TUC)は、約17万人と推定しており、衣料品店、配膳、バーなどで働く労働者に多く見られるとしている。

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